「前へ」>「投げ」。14日に開幕するレスリングの世界選手権(カザフスタン)で2大会ぶりの優勝をねらう男子グレコローマンスタイル60キロ級の文田健一郎(23=ミキハウス)が10日、現地へ向かう羽田空港で取材に応じ、「前に出ることをもう1度しっかり意識していく」と表情を引き締めた。

上半身の攻防で勝敗を決めるグレコローマンにあって、前にでて圧力をかけていくことで試合を有利に進められるのは基本。ただ、「いままでも『前に出ろ』と言われてきたけど、投げられていた部分があった」。たぐいまれな柔軟性を支えにした投げ技、特に必殺の反り投げは海外勢にも威力十分で、17年大会では一気に頂点に駆け上がった。ただ、今年に入って4月のアジア選手権では北朝鮮選手に敗れるなど、「防がれるようになった」。世界一になってからはさらに多彩な投げ技を習熟してきたが、研究対象となり壁が立ちふさがっていた。

「草津で追い込まれまくって、もう1度前に出ないとだめだなと」。8月の草津合宿で、投げられない現実をコーチ陣とのスパーリングなどで痛感させられ続け、打開策を考え抜いた。結論が「前に出る」だった。「まずはそこ。自分に有利な組み手になってから投げにいけばいい」。考えを整理できた。「いや~、草津は地獄でした」と振り返りながらも、方向性は定められた。

2大会ぶりの世界選手権は、表彰台で東京オリンピック(五輪)代表に内定する大一番になる。「わくわくしている。早く試合がしたい」と高揚を隠さなかった。