早実野球部出身の新兵器が公式戦初のTDを挙げた。連覇を狙う早大は日体大を相手に、エースWRブレナン(4年)の先制TDパスなどで前半21-0とリード。第3Qにはピンポイント起用のQB吉村優(3年)が1ヤードのTDランをマークし、思い切りのいいランにパスも初めて成功させた。28-0の完封で2連勝に貢献し、異種競技での甲子園出場に夢を膨らませた。

早大はもう一つ攻めきれない第3Qに吉村を投入した。チームでは3、4番手と言えるが、坂本攻撃コーディネーターは「予定通り。彼が成長できれば武器になる」と起用。まずは自らのランで4ヤードをゲインする。ゴール前1ヤードに攻め込むと再び吉村を投入。左へのキープで走り込み、期待に応える足を生かしたTDを挙げた。

吉村は戸惑うように審判にボールを手渡した後、滑って転んでしまった。「うれしかった。TDは初めてで、どうしたらいいのかと。ボールを渡したら…。恥ずかしかった」と苦笑いだった。ベンチに戻るとチームメートに祝福され、喜びを実感した。

15年夏の早実2年時には、控え投手として甲子園に出場した。翌年は右腕エースとなったが西東京大会ベスト8敗退。「違うスポーツで日本一になりたい。肩には自信がある」とQBに転身した。身体能力の高さ、ハートの強さに、未経験ながらも1年時から期待され、2年時の昨季も1試合に出場した。

指令塔役という難しいポジションに加え、基幹理工学部と両立に悩み、昨春には退部を考えたこともある。昨秋からピンポイントの起用方法にも悩んだが「野球ではリリーフも多かったので。いつでも準備してと切り替えられた。どうチームに貢献できるかを考えられるようになった」と吹っ切れた。終盤には17ヤードのパスも決め、足だけではないことを示した。今後の対戦相手には、警戒すべき新兵器をアピールした。

DB渡辺(4年)も早実で甲子園出場し、日本ハム清宮の1年先輩として教育係でもあった。東大との開幕戦ではインターセプトをマークした。今年も吉村の勧誘もあって後輩たちが入部した。早実野球部は不祥事でセンバツ出場は消えたが、こちらの先輩は新境地で活躍する。全日本選手権決勝の甲子園ボウル出場へ向けて、まずは順当に2連勝した。

吉村は早実時代に甲子園のマウンドには上がれず、昨年の甲子園ボウルでも出場機会はなかった。「1プレーでもいいからチームのためになればと思っている。もう1度甲子園でプレーしたい」。その夢へ前進する初のTDとなった。