ショートプログラム(SP)首位の紀平梨花(17=関大KFSC)が、フリーも145・98点で1位となり、合計224・16点で優勝した。冒頭のトリプルアクセル(3回転半)の連続ジャンプを決めるなど、大きなミスなく安定した演技を披露。「金」への思いを詰め込んだ新衣装で今季初戦を飾った。男子SPはオリンピック2連覇の羽生結弦(24=ANA)が98・38点で今季初戦を首位発進した。

エメラルドグリーンの新衣装を身にまとった紀平が、力強く滑りきった。冒頭の大技、3回転半と2回転トーループの連続ジャンプを決めると、続く3回転半も力強く跳んだ。回転不足の判定を取られたが、わき上がる会場。他のジャンプもまとめ、演技終了後は右拳を高く突き上げた。演技前の6分間練習で、1度も決まらなかった3回転半を成功。喜びもつかの間「GPシリーズが始まる。もっともっと完璧な着氷で加点のつくアクセルを跳ばないといけない」と自分に言い聞かせた。

今大会は過去に浅田真央のトレーナーを務めていた加藤修氏が帯同した。SPの紀平の行動を観察した加藤氏は「毎回違うことをやっていて、それはダメだなと思った」と振り返る。それからすぐに1日の時間割を作成。演技前の靴をはくタイミングも指定するなど、紀平がこれまで持っていなかったルーティンを作った。この日正午すぎにサブリンクで行われた公式練習では、納得いくジャンプが跳べなかったが「試合ではどう跳ぶかすごく集中できた」と本番には引きずらなかった。

胸に秘めたる思いがあった。新衣装にあしらわれた装飾は、当初は銀色だったが、金色に変更するように直訴。「銀よりも金色が好き。気持ち的にも金を目指そうと思える」。そのこだわり通り、今季初戦で元世界女王のメドベージェワをかわし、表彰台の一番上に立った。

今季フリーで投入を目指す4回転サルコーは、今大会は見送った。それでも「できればすぐに、どの試合でも跳びたい。次の試合まで本気で入れるよう練習して他のジャンプも安定させたい」と意欲を見せた。まずは10月5日のジャパンオープン(さいたま)で組み入れることが濃厚。成功すれば紀平の新たな武器となる。【佐々木隆史】