【シュツットガルト=阿部健吾】体操の世界選手権は男子個人総合決勝が行われ、萱和磨(22=セントラルスポーツ)は6種目合計85・899点で昨年に続く6位だった。昨年3位のニキータ・ナゴルニー(ロシア)が88・772点をマークして初優勝、団体総合に続く2冠を達成した。

最後の鉄棒で迷いが生じた。やり始めて間もなく、唯一不安があった新技の手放し技「ヤマワキひねり」を回避するかどうか。萱はしばし尻込みしていた。予選、団体決勝も全6種目を通し、これが今大会18演技目だった。それは内村航平ら、歴代の日本の絶対的エースが歩んできた道。その姿が弱気の虫を排した。

「疲労とか言ってられない。やっぱり日本のエースは3日間6種目を経験してきている。ここでミスしたら絶対に嫌だな。これから日本を引っ張ると思っているのなら、今日もしっかりやりたい」。

個人総合で上位6人による第1班は初めて。優勝争いを繰り広げるライバルたちに会場の関心が集中する最終種目の鉄棒。「変な空気だった」と初体験も、迷いを生ませた要因だろう。ただ、そこで逃げず、負けなかった。鉄棒は冒頭に「ヤマワキひねり」を決めると、最後の後方伸身2回宙返り2回ひねり下りまでをつなげきった。着地を決めて、この日6回目の大きなガッツポーズで締めた。

目を見張る体力だが、「特別にケアとかはしていない」。むしろ団体決勝を終えた9日からの2日間で徹底したのは「よく食べて、よく寝ること」。連夜を10時間の睡眠で過ごし、食事は前日のパスタも特盛りを平らげた。「さすがに朝おなかの調子が悪くて、薬をもらった」と照れた。同じく食欲旺盛な橋本と同部屋で「大食い部屋」とあだ名される胃袋の強さ。重くなるのを避けるため、食事量を制限する選手も多いが、逆に食べて力を生み出した。

昨年と同順位だが、難度を示すDスコアを上げ、出来栄え点のEスコアも押し上げ、1・134点を上積みした。平行棒でも15・000点の高得点も稼いだ。「自分の体操がかなり評価されてきていると思った。苦手なところを地道に地道に、泥臭い練習をして、それが形になってきている。細かい練習を続けていきたい」。東京へは従来通り、苦手を徹底的に克服ししていくのみ。「今日は跳馬で離された。そこで離されなければメダルも見えてくる」。迷いなく、やり抜くのみ。