NBA開幕戦に向けたウィザーズ八村塁の連載2回目は、八村を取り巻く厳しい環境について探った。NBAは生存競争が激しく、シーズンを主力としてプレーするにはチーム事情も関わってくる。ドラフト1巡目選手が活躍するとは限らない現実がある。

ウィザーズは昨季、32勝50敗の4位でプレーオフ進出を逃した。今季も主力のウォールがケガでシーズン絶望となり、八村にかかる期待は大きい。ただ、常にトレードが存在するNBAではチーム事情も一気に変化するため、1巡目の八村でも油断はできない。現在、B1のアルバルク東京で活躍するカークは14年にキャバリアーズに入団したが、5試合の出場に終わった。

カーク チームにはベテランが多く、プレー時間が獲得できなかった。いつもカットされる(クビになる)恐怖を感じながらプレーしていた。塁はオープン戦でいいプレーをしていたし、チームも若手が多い。チャンスをいかにプラスに持っていくかだ。

日本代表でB1川崎ブレイブサンダースのファジーカスは07年にドラフト2巡目でマーベリックスに指名されたが、シーズン途中で解雇された。すぐクリッパーズと契約したが、翌シーズンの延長はなかった。NBAの厳しい現実を知る1人でもある。

ファジーカス マーベリックスでは自分が必要とされなかったし、経験値も足りなかった。クリッパーズでは、チームも僕が未来を背負っていく選手だと言ってくれたが、ビジネスの部分が絡み夢が閉ざされた。すごくびっくりした。まだ22歳で裏の部分を知らなかった。NBAとはいい選手であれば残れると思っていたので。

実力があったとしても、チームを取り仕切るGMらにとって編成はパズルのようなもの。はまらなければ生き残れない。ただ、八村はドラフト1巡目で期待も大きく環境がかなり違う。

ファジーカス 1巡目9位は待遇が別格。チャンスもくれるし、お金もかけて大事に育ててくれる。バスケット以外は何も心配しなくていい。体に気を付けてやれば問題ない。

八村は苦手だった英語もゴンザガ大で習得し、チーム内のコミュニケーションに支障はない。リーグ戦は来年4月まで82試合をこなす長丁場だ。深夜移動も当たり前。そうした厳しい環境に早めに適応できれば、プレー面にも好影響を及ぼすはずだ。【松熊洋介】