オリンピック2連覇の羽生結弦(24=ANA)が、今季世界最高の109・60点で首位発進した。昨季からミスが続いていた冒頭の4回転サルコー、続く3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)を完ぺきに決めるなど、全てのジャンプをまとめる完成度の高い演技を披露した。自身4度目の出場にして初のスケートカナダ優勝へ、さらなる高みを目指して26日(日本時間27日)のフリーに臨む。

運命の冒頭。華麗に舞った4回転サルコーを鮮やかに着氷すると、羽生は大歓声に包み込まれた。続くトリプルアクセルも完璧に成功。4回転と3回転の連続トーループもこらえながらまとめた。109・60点は今季世界最高。大量のプーさんのぬいぐるみがリンクに投げ込まれる中、両腕を左右に広げて王者の風格を漂わせた。「プーさんが投げられる光景とか、演技を終えたときの達成感を感じられたことは幸せだった」と万感の思いだった。

呪縛から解き放たれた。3月の世界選手権の失敗を引きずり、9月のオータム・クラシックで転倒した冒頭の4回転サルコーを、昨年11月のGPロシア杯以来となる成功。「絶対に同じ失敗は繰り返したくない」と強い思いがあった。出来栄え点で4回転サルコーはジャッジ9人中5人が最高の5点。トリプルアクセルは8人が5点で、満点がついた。自身が持つ世界最高点110・53に0・93点差に迫る結果に「完璧に幸せだったとは言えないが、今日できるベストは尽くせた」と涼しい顔で言った。

理想はさらに高い。完璧ともいえる4回転サルコーは「まだ不一致。もっとクリアにスムーズに跳べるかな」と反省を忘れない。演技全体を通しても「これはノーミスとは言えない。もうちょっと積んできたものを出せればいい」。点数だけでは計り知れない、羽生のみぞ知る、完成度の高い演技を追い求める。

SP、フリーともに2季連続の再演だからこそ、こだわりは強い。2位に20点以上差をつけ、初のスケートカナダ優勝が目前に迫ったが「点数は試合によってばらつきがある。しっかり明日につなげたい」と引き締めた。紅葉の深まるケロウナで、完璧に演じた「秋によせて」。ここからさらに、羽生独自の色を付け加え、熟成度を深めて、理想の演技を完成させる。【佐々木隆史】