プロスケーターで9月まで関大(大阪・吹田市)のアイススケート部監督を務めた織田信成氏(32)が18日、同大学の施設(高槻市)で指導する浜田美栄コーチ(60)からモラルハラスメントを受け監督辞任に追い込まれたとして、同コーチに対し、1100万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

大阪市内で会見した同氏は「フィギュアスケート界の悪弊へ一石を投じる思い」とし、関大へハラスメントの調査と救済措置を求める申し立ても行った。

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大阪地裁の一室にスーツ姿で現れた織田氏は、目をうるませながら言葉を紡いだ。「僕自身、そこまで精神的に弱い人間ではないと思っている。指導者として今後活躍していきたいというのが1つの目標であり、夢だったので、こういう状況になったのは非常に残念です」。紺色のハンカチを手に率直な思いを訴えた。

訴状によると18年平昌五輪4位の宮原知子、同年グランプリ(GP)ファイナル優勝の紀平梨花らを指導する浜田コーチに、17年2月ごろからハラスメントを受けたという。織田氏は13年の引退後、関大で指導にあたり、16年に同大学のアンバサダーに就いていた。

ハラスメントは、17年4月のアイススケート部監督就任後も続き、無視や露骨に嫌がるそぶりを見せたと主張する。「30歳近くも年齢が離れていて、僕から何かを言うのは難しい環境だった」。今春には40度を超える高熱のため、約1週間入院。復帰後も、練習時間や部則の変更をめぐって意見が対立し「そこまで変わったお願いはしていないつもりが、突然激高されたのでびっくりした」と言い、9月に監督を辞した。

不信感は母校である関大にも向けられた。7月1日には芝井敬司学長(63)らと面談し、ハラスメント調査と処分を依頼。だが、同大学による調査が行われていなかったとし「4カ月以上前なので…。シーズンが始まる前に解決したかった。関西大学がもう少し真摯(しんし)に対応してくださったら、ここまでにはならなかった」。この日、提訴とともに大学へハラスメントの調査を申し立てたが「今のところ(関大に)戻る可能性は低いと思う」と複雑な表情を浮かべた。

22日からはGPシリーズ最終戦のNHK杯が札幌で行われる。浜田コーチが指導する紀平も、シリーズ2戦上位6人が出場するGPファイナル(12月、イタリア・トリノ)を懸けて出場。佳境を迎える時期に、リンクの外で無視できない問題が浮き彫りになった。