パワハラ問題で解任されていたレスリング女子の元日本代表監督の栄和人氏(59)が至学館大(愛知)の監督に復帰する。20日、至学館大が発表した。五輪4連覇の伊調馨(35)らに対するパワハラ問題で日本協会強化本部長を昨年4月に辞任し、同6月には同大の監督を解任されていた。12月の全日本選手権(東京)で指揮を執る。今後は日本代表の指導にどう関わるかが注目となる。

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現場復帰を果たす栄氏は会見は行わず至学館大を通じてコメントを発表した。

「一度は、すべてを失ったという思いで絶望していました」という言葉に始まり、解任された後の心境を「後悔と反省の日々が続き、もはや人生は終わったと感じました」と表現。一部の選手の要望で昨年12月から同大の外部コーチとなって練習を見る中で「心身共に元気を戻してくることができました」と記した。

伊調らへのパワハラ問題で、日本代表、大学での役職を失って1年半。昨年12月には愛知県教育・スポーツ振興財団のスポーツアドバイザーに就任し、お年寄りへの指導なども行っていた。同時に志学館大の道場にも顔を出す回数が増えていった。国内大会では観客席から見守る姿が度々見られ、9月の世界選手権(カザフスタン)でも観客席に姿があった。同月には志土地翔大前監督が一身上の都合で辞職し、実質的な監督の役割も果たしていた。

全日本選手権の参加申し込みの締め切りが前日19日で、書類に監督を書き込む必要があり、この日に発表となった。至学館大の発表資料に並んだ復帰理由は3つ。<1>選手たちとの信頼関係の再構築と選手たちの希望で、チームの中心になる指導者を明確にする必要性があった<2>本人の反省と研修、及び心身、情熱の回復で、自費で世界選手権に赴いたことなどを評価<3>大学内サポート体制の充実で、選手の意見などに迅速対応するシステム改善ができた、ことが明記された。

「再び監督になれるとは夢にも思っていませんでした。そして、このチャンスを頂いたことに心から感謝すると同時に身が引き締まる思いです。ゼロからの出発だと思い頑張ります」。文書の最後には、そう再出発の誓いが書かれていた。