男子66キロ級は昨年まで2年連続世界一の阿部一二三(22=日体大)が決勝で世界王者の丸山城志郎(26=ミキハウス)に延長で優勢勝ちし、2年ぶり4度目の優勝を飾った。阿部は丸山に3連敗中だった。4連敗となれば、丸山が東京オリンピック(五輪)代表に決まる可能性もあった。瀬戸際で、しぶとさを発揮し東京への道を自力でこじ開けた。妹で女子52キロ級で世界選手権2連覇の阿部詩(19)は決勝で敗れた。きょうだいで笑えず、優勝すれば20年東京五輪代表に決まる可能性があったが、持ち越しとなった。

意地と意地のぶつかり合いを、阿部が執念で制した。決勝の延長3分27秒、相手得意の内股に支え釣り込み足を合わせ、技ありを奪った。3連敗中だった丸山を下し優勝。気迫の柔道だった。自ら組み付いて追い込む。指導を受けても、ひるまず前へ。延長に突入し計7分27秒の激闘。2連覇した昨年の世界選手権以来の優勝。ライバルの東京五輪代表決定を阻止し「自分が一番強いと、また思えた」と意地を示した。

畳をおりても「自分の持ち味は前に出る柔道。(丸山とは)気持ちと気持ちのぶつかり合い。何が何でも絶対に引かないんだという思いで臨んだ」と興奮冷めやらぬ様子。今夏、東京五輪会場の日本武道館で開催された世界選手権でも敗れるなど、直接対決で丸山に3連敗中だった。妹の詩とともに東京で金という目標がある。その妹は世界女王に。一方、3位で兄の威厳を示せていなかった。ただ、そんな現実も糧にした。「妹の存在も大きかった。妹だけど、あっちは(世界選手権)優勝で自分は3位。悔しかった」と原動力にした。ようやく連敗を止め、丸山の代表決定を阻止し、踏みとどまった。「(丸山と)これから何回も当たる。負けなしで五輪出場を決めて、金を取りたい」と言い切った。

この日は組み手争いで最後まで圧力をかけ続け、前へ、前へ。何度も苦汁をなめさせられたともえ投げにも粘り強く対処。日本男子の井上康生監督は「自分の柔道を取り切るために、相手のことも考えた闘いだった」と高く評価した。その一方で、同監督は「阿部が優勝しても、(代表選考レースは)丸山がリードしている。それは阿部も分かっている。阿部が言うように、全て勝つことが重要」と引き締めた。復活ののろしを上げた東京の主役候補は「積み上げてきたものは簡単には崩せない。もう1度積み上げる」と目をぎらつかせた。【南谷竜則】