本場ノルウェー生まれの日本の守護神が、チームを世界へ導く。開幕連勝を目指す日本は、コンゴ(旧ザイール)と対戦。28-16と快勝し、1次リーグ突破に大きく前進した。ノルウェー代表の道を捨てて日の丸をつけて東京五輪を目指すGK亀谷さくら(32)は前半だけの出場ながら好セーブを連発。速攻の起点としても勝利に貢献し、チームの上位進出を誓った。

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前半25分、相手シュートを止めた亀谷が30メートルのピンポイントパスを通す。走りながら受けた秋山が豪快にゴール。この日2本目の速攻で15-7とリードを広げると、チームメートと声をかけあい笑顔をみせた。守備と攻撃で活躍し「まあまあかな」と振り返った。

五輪と世界選手権で計6回も優勝したハンドボール強国ノルウェーで生まれ、育った。ユース代表に選ばれ、12年ロンドン五輪代表候補にもなった。しかし、直前で外されてチームは金メダル獲得。「ノルウェーはいいGKが多いから」と悔しさを隠して言った。

15年に当時代表監督だった栗山雅倫氏に「日本の力になってほしい」と誘われて代表入りを決意。同年のリオデジャネイロ五輪予選でデビューすると、抜群の能力でチームの中心になった。「シュートに向かう気持ちの強さがすごい」と栗山氏は代表史上最高のGKへの賛辞を惜しまない。

4年前は日本語も話せなかったが、日本人の母まりこさんが応援してくれた。「今は父(ビヨルンさん)の方が一生懸命」と亀谷。大会中にはノルウェーから両親が来日、母の故郷岡山からも親戚が応援に駆けつける。「日本は大好き。みんな優しい。唐揚げもおいしい」と笑顔。ノルウェーでなく日本を選んだことも「後悔はない」と話した。

東京五輪が「一番のゴール」というが、今は「この大会のことしか考えていない」。1次リーグ突破まであと1勝。4日のスウェーデンは強豪だが「知っている選手も多いし、チャンスはある」と亀谷。「日本の人にハンドボールを知ってもらう。それが目標」。北欧から来た「さくら」は、熊本で、東京で、満開の花を咲かせる。【荻島弘一】

◆亀谷さくら 1987年1月7日、ノルウェー第2の都市ベルゲン生まれ。ノルウェー名は「サクラ・ハウゲ」。6歳からハンドボールを始め、地元クラブでプレー。同国1部リーグのバイパー・クリスチャンセンから18年にデンマークのニュークビンに移籍。今年5月からフランス1部のESBFブザンソンでプレーする。14年にはノルウェー代表として親善試合2試合に出場。173センチ、73キロ。