強化体制などを巡って選手との対立が表面化し、混乱が続く全日本テコンドー協会に、20年東京パラリンピック代表の選考方法を疑問視する意見書が届いていたことが7日、分かった。

意見書を出したのは、パラテコンドーの17年アジア選手権-75キロ級銅メダリスト高橋健太郎(47=筑紫野道場)。「アスリートファーストではない。特定の人が出られないようにしている。強さでなく、年齢で分けられるのはおかしい」と主張する。

高橋は世界テコンドー連盟から「最低障害基準」に達していないとの認定を受け、現在、東京パラリンピックへの出場資格がない。しかし、同協会が定めたルールによって、優勝者が東京パラリンピックの切符をつかめる来年1月の最終選考会に、今年の全日本選手権で準優勝した同世代の選手が「年齢の壁」によって出場できなくなっている現状に疑問を感じ、意見書を出したという。

最終選考会に出場するには「育成指定選手」または「強化指定選手」となる必要がある。「育成指定選手」は40歳以下という年齢制限が設けられている。これが壁となり、規定では「育成指定選手」になるのは、諦めるしかない。

一方で「強化指定選手」を目指すには、勝利数などに応じて得られるポイントで「10点以上」の獲得が求められる。とはいえ全日本選手権を制しても、10点には届かず、満たすには国際大会に遠征する必要がある。「育成指定選手」でない選手は、国際大会に自費による個人出場を強いられる格好だ。高橋は「障がい者として社会生活を送る中、全く経験のない状態で、個人で困難な大会手続きやクラシフィケーション(障害審査)を受け、1週間近くの休日と通訳、セコンドも含めた多くの海外遠征費を負担しながら、ポイントを獲得するまで参加し続けなければならない」。それは事実上、不可能だとする。

現在、パラテコンドーの「育成指定選手」と「強化指定選手」は合わせて6人だけ。その中で「40歳の年齢制限」と「国内では獲得不可能な10ポイント制」は一部の選手を不利にし、除外するためのルールだと高橋は強調する。「事実上、協会が出したい選手を選んでいる」と今までの体制に対する不信感を募らせる。

一連の混乱を受け、テコンドー協会は金原昇会長を含む全理事の退任が決まっている。外部から招かれた理事による新体制が年内にはスタートする見通しだ。新たに協会が生まれ変わるタイミングで、パラリンピックの強化体制の「解体」も強く訴えるとともに、特定の選手が不利を受ける東京パラリンピック代表選考要項の変更を求めた。障害者手帳を持つ高橋は今後、障害の再審査を要求する意向で、24年のパリ・パラリンピックを目指している。

全日本テコンドー協会の関係者は「パラリンピックの委員会でしっかり確認と検討をしないといけない」と話す。

パラテコンドーは東京パラリンピックから正式種目になった。