【トリノ=佐々木隆史】ショートプログラム(SP)2位の羽生結弦(25=ANA)が、フリー2位の194・00点の合計291・43点で2位となった。

男女通じて最多となるファイナル5勝目は逃したが、4回転ルッツを含む4種5本の4回転ジャンプを現行ルールで初めて着氷した。最終滑走でSP首位のチェン(米国)も4種5本の4回転ジャンプを成功させて、世界最高を更新する合計335・30点で3連覇。羽生は25度目の誕生日に抱いた悔しさを糧に高みを目指す。

   ◇   ◇   ◇

過去に経験したことのない過酷な4分間だった。フィニッシュポーズを決めた羽生は、右膝から崩れ落ちた。氷上につっぷし、もん絶した表情を浮かべながら何とか立ち上がったが、息絶え絶え。表示された得点は194・00。納得のいく数字ではなかったが「勝負には負けてるけど、自分の中での勝負にはある程度勝てた。試合として1歩強くなれたと思う」と手応えをつかんだ。

12・95点差のチェンを追いかけたフリー。現行ルールとなって以降、世界初となる4種5本の4回転ジャンプを跳んだ。17年ロシア杯で初成功し、その後負傷してから封印してきた4回転ルッツを2年ぶりに解禁。ただ想像以上に体力を要し、後半2本の4回転のコンビネーションジャンプで回転不足や予定とは違うジャンプになった。最後のトリプルアクセル(3回転半)も1回転半に。「疲れますね。この構成で滑り込んでいる訳ではないので」と素直な思いを吐き出した。

闘志は消えない。世界初のプログラムを披露するも、次に演技したチェンも4種5本の4回転ジャンプを完璧に成功。18年シーズンからフリーで跳べるジャンプの数が8本から7本になったにも関わらず、旧ルールでの自身のフリーと合計の世界歴代最高点を超された。「もう楽しむしかないです。旧ジャッジのころの点数まで抜かれて、むちゃくちゃ悔しいです。今に見とけって思います」と不屈の精神力を示した。

これでチェンとの直接対決は、団体戦の17年国別対抗戦を除いて4勝4敗。3月の世界選手権での雪辱を果たすことはかなわず、40点以上の差をつけられた。それでも「ループ、ルッツに関してかなり加点をもらえた。今回の点差はそんなに自分が思っているほど遠くないと思っています」と挽回を諦めていない。

トリノの地で迎えた25歳の誕生日は、今後のスケート人生に大きな影響を与える1日になった。次戦は出場すれば4年ぶりとなる全日本選手権(19日開幕、東京・代々木)。その先にはチェンとの再戦が予想される、来年3月の世界選手権(カナダ)を控える。1年の決意を問われ「勝ちます」と即答。雌雄決する舞台までに、五輪2連覇の王者がさらなる進化を目指す。