20年東京オリンピック(五輪)選考レースで注目が集まった女子シングルスの代表争いがついに決着した。世界ランキング10位の石川佳純(26=全農)が世界選手権女王で同3位の劉詩■(中国)に0-4で敗北したが、平野美宇(19=日本生命)も同18位の王芸迪(中国)に1-4で敗れたため、世界ランキングのポイントでリードする石川が3大会連続の五輪代表を確実にした。平野は16年リオデジャネイロ五輪に続きシングルスの代表権を逃した。

石川は涙がこぼれぬよう、天を仰いだ。平野が敗れ、東京五輪のシングルス代表を確実にした。1年間戦い、世界ランクを決めるポイント差はわずか135点。死力を尽くした選考レースが終わった。「もう日本人同士で戦わなくて済む」。心からの本音だった。

世界女王の壁は高かった。第2ゲームは2度のゲームポイントを生かせず12-14で落とすと、そのまま0-4で敗戦。あっぱれといった表情で「いや~、強かった。世界王者なので何も失うものはなかったけど、2ゲーム目は取りたかった」。苦しみ抜いた選考レースを終え、すがすがしく笑った。

「24時間、忘れることなんてない」。一生に1度の自国開催という価値と重みに、この1年間、苦しみ続けてきた。入浴中も食事中も、東京五輪のことが脳裏にこびりついて離れなかった。選考レース後半「忘れ物を取り返しに行きたい」とこぼしたことがある。16年リオデジャネイロ五輪の女子シングルス。当時、世界ランキング6位だった石川は北朝鮮の同50位選手にまさかの初戦負けを喫した。右足を痛めるアクシデントがあった。

「五輪でした思いは五輪でしか返せない。すごく悔しい思いが残っているシングルスに出場してリベンジしたい」

12年ロンドン、16年リオで経験したが3度目となる東京の選考レースが最も苦しかった。10月、自身で「トンネルのようだった」と表すように、心が折れかけた。母久美さんは振り返る。「普段の自分に戻した方がいいと口では言っても、なかなか難しかった」。

自分で吹っ切るしかなかった。北米オープン出発前、18歳以来という「黒髪」で原点回帰。この日「北米でダメだったら諦めるつもりだった」と明かした。

ともに戦った平野の健闘もたたえた。「シングルスに出られなかった選手の責任も感じる」と言い、また涙ぐんだ。そして「美宇ちゃんには卓球への姿勢でたくさん学ぶところがある。団体戦では美宇ちゃんとプレーできると思うので、五輪ですばらしい成績を残したい」と語った。

これまでで最もつらく、心をすり減らしてつかんだ3度目の五輪切符。この苦しさは必ず、過去2度、届かなかった個人でのメダル獲得に生かすつもりだ。【三須一紀】

※■は雨カンムリに文の旧字体