体操男子でリオデジャネイロ五輪団体金メダリストの白井健三(23=日体大大学院)が半年ぶりの実戦で持ち味の大技に挑んだ。

オープン参加した床運動の冒頭でシライ3(後方伸身2回宙返り3回ひねり)を跳び、「体操できる喜び、ユニホームを着て手を挙げる喜びがあった。とにかく楽しみたかった。そういった面では目標は達成できた。どんな演技でも伸身リ・ジョンソン(シライ3)を使うと決めていたので」と笑顔で振り返った。

15年の今大会で史上初めて成功させたH難度の大技。代名詞とも言える技は、故障続きの今季では初投入だった。「どういったら点数を取れるかを考えすぎていた。一番良かった時の自分は、技が入っていた時の自分。いろんな技をやめて点数を取りにいくのは面白味ない、違うなと」。そこには心境の変化があった。

今春の世界選手権(9月、ドイツ)選考大会では、足首の故障などが響いて代表の座を逃した。夏には左肩も痛め、実戦を離れた。春には思うように伸びない出来栄え点のEスコアへのいら立ちを隠さず、審判に疑問を投げかけることもあった。それが、長く試合を離れた期間で、客観的に自分を見た。結果、得点を稼ぐために技を抑えてEスコアを狙いにいくよりも、大技を入れてこそ、という結論にいたった。「動ければ点数もついてくる」。この日も着地の乱れ、跳躍姿勢の乱れなど細かな減点が重なり、Eスコアは7・600点にとどまったが、春のように言及することはなかった。

「大げさに言えば1回引退した感覚」。試合後の会見で言った。“復帰戦”は収穫があった。東京五輪代表をかけた勝負は、来春の選考会になる。「試合に戻ってきて初めて、あきらめたくて良かったと思える。来年は試合が増えればもっと思える」。ここから仕切り直す。