4年ぶり出場の羽生結弦(25=ANA)が、男子SPで110・72点をたたき出し、首位発進した。国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、自身が持つ世界歴代最高110・53点を上回った。最後のジャンプを4回転-3回転の連続トーループからトリプルアクセル(3回転半)に入れ替える演技構成の変更が奏功した。来年3月の世界選手権(カナダ・モントリオール)代表選考を兼ねる中、22日のフリーで5度目の優勝を狙う。

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羽生には無用の心配だった。同じ第4グループ1番手で、宇野が105点を超える会心の演技。余韻が残るリンクに5人目で登場したが、地力で上をいった。まず4回転サルコーを降りると、グランプリ(GP)ファイナルで単発に終わった4回転-3回転の連続ジャンプを着氷。3回転半も踏みとどまった。総立ちの拍手にも表情を崩さず「おおむね満足」とうなずいた。得点は110・72。参考記録ながら、18年11月ロシア杯で打ち立てた自身の世界最高110・53点を上回った。

NHK杯、GPファイナルと5週で3戦の過密日程は4年ぶり。SP曲「秋によせて」2季9戦目にして初めて、最後のジャンプを連続から3回転半に入れ替えた。常に「ノーミス以外は敗北」の観念に駆られる中、今回ばかりは負担軽減を優先したと思われたが「それよりもGOE(出来栄え点)を稼ぎたかった」と明かした。基礎点は32・77点から32・20点へ「0・57下がるけどプログラムを映えさせたくて。1週間前に変えたんです」。結果、ジャンプ3回のGOE合計は11・27点を記録。4回転ルッツの基礎点(11・50点)1本分に迫る荒稼ぎでローリスクハイリターンを成立させた。

心も整えた。2日前に拠点のカナダから帰国し、前日の曲かけ練習ではジャンプ5本で成功ゼロに終わった。GPファイナルで自滅してチェン(米国)に敗れ「実は割とへこんでて、ふふふ」と打ち明けつつ「心身の消耗が激しくて(全日本へ)もう試合か、という感覚だった。でもトロントで応援メッセージを読ませてもらったら『1人のスケートじゃないな』って。力をもらって心をつなげた」と立ち直れた。

必然の首位で22日のフリーへ。現行の採点方式となった04年大会以降、最長ブランクとなる4年ぶり制覇と高橋大輔に並ぶ最多タイ5度目Vがかかる。「4回転アクセルは…しないと思います」。おどけた笑顔に復調と自信を込めた。【木下淳】

◆フィギュアの採点方式 04-05年シーズンから6点満点が廃止され、現在の上限のない加点方式を導入。各種ジャンプやスピンなどの要素ごとに難度に応じた基礎点を決めておき、それぞれの出来によって点数を加減。演技全体についても項目に分けて得点化し、合計で順位を決める