第99回全国高校ラグビーは、27日に東大阪市の花園ラグビー場で開幕する。日刊スポーツではWEB連載として、今秋のW杯で活躍した日本代表選手の母校8校を紹介する。最終回は正確なキックで1次リーグ突破に貢献したSO田村優(30=キャノン)の原点となった国学院栃木を取り上げる。

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W杯で日本最多の51得点を挙げた大先輩の背中を追う。20年連続25回目の出場となった国学院栃木のSO伊藤耕太郎(3年)は、W杯で同じポジションの田村の活躍をテレビで食い入るように見入った。「大舞台で緊張する中でゲームメークをしながら、あれだけ精度の高いキックを蹴っていたのはすごい」と高い技術に驚いた。

今年8月、7人制の海外合宿でフィジーに行った時、隣で日本代表が練習をしていた。SH流に「どこ出身?」と言われ「国栃です」と答えると、田村を連れてきてくれた。「頑張って」と声をかけられ、思わぬ出会いが実現。「(国栃に)入る前から知っていた」というOBの姿を目の当たりにし、感動した。W杯後、田村は母校に凱旋(がいせん)。全校生徒が集まり、大歓声の中、さまざまな思い出を語ってくれたスーパースターに伊藤はさらなる憧れを抱いた。

田村の技術を習得しようと日々奮闘する。「ゲームをコントロールする立場。得意のランから積極的にゲームメークしていきたい」と意気込む。昨年は平均体重100キロの重量FWを擁した「メガトン」作戦で相手を翻弄(ほんろう)した。今年はそれに加え、BKでの展開も強化。91回大会以来の8強へ準備は整った。

前回大会は今年元日の3回戦で報徳学園に19-57と完敗。Bシードの今大会は30日の初戦で、再び報徳学園と当たる可能性がある。吉岡肇監督(58)は「不思議な巡り合わせですね。1年に2回も同じ相手に負けるわけにはいかない。リベンジのチャンスをもらったと思っている」と語った。6月の関東大会では桐蔭学園に敗れたものの、準優勝。東北6県の有力校との練習試合ではトライを1本も奪われないなど強さを見せつけた。西高東低と言われる高校ラグビーだが「東の2番手が簡単に負けるわけにはいかない」と闘志を燃やす。

前回大会は2年生中心のチーム。花園経験者が16人もいる。「今年は経験値のある選手がそろった」と吉岡監督。その中で伊藤は前回大会初戦で右足を骨折し、報徳学園戦は出場できなかった。「悔しい思いをした。万全の状態で挑みます」。“田村2世”を目指し、誰よりも強い思いで最後の花園に向かう。【松熊洋介】