能代工(秋田)の司令塔・伊東翼(3年)が、あわや逆転負けの危機を救った。

最大18点差を第4クオーター(Q)途中に1点差まで迫られたが、連続アシストと自身の得点で加点。チーム11連続得点を導き、初出場の鳥取城北を79-69と退けた。計8アシストに加え、フリースローは13本中11本成功。「昭和、平成の常勝軍団」の古豪完全復活に勢いをつけた。2年ぶりの優勝に挑む明成も104-78で東海大諏訪(長野)に勝ち、東北勢は2校が26日の3回戦に進出した。

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伊東の冷静な判断力が相手の猛追を止めた。第4Q序盤から7連続失点で焦る仲間を、激しい声でも鼓舞。67-66の1点差になると、両チーム最多23得点と好調だった秋元淳之介(3年)に絶妙パス。直後にも須藤陸(3年)にお膳立て。さらにドリブルで相手守備を切り裂いて得点し、視野の広さを見せつけた。「個人的には焦りはなかった。相手の流れにはなっていたが、考えてプレー出来たことで良いリズムに戻すことが出来た」と勝負どころで本領を発揮した。

要所でのフリースロー成功率もチームを支えた。第4Q終盤は、相手のチームファウルの状況から、あえてドリブルを増やし、ファウルを誘って2ショットを得た。13本中11本を決め、8割5分の成功率。8アシストだけでなく、チーム2番目の16得点を重ねた。

強豪が集う5月の能代カップでの悔しさが成長の糧となった。今大会にも出場している洛南(京都)に71-73、中部大第一(愛知)に67-68と惜敗。「どちらも自分がフリースローを最後に外して負けた形。意識がガラッと変わりました」。練習の合間だけでなく、夜に居残り、10本連続成功まで毎日続けた。「特に8本後の残り2本。あの2試合を思い出しながら集中力も養えました」。小野秀二コーチ(61)から助言された手首の角度も徹底しながら、心の技も磨き続けた結果を大舞台で披露した。

国内最多の全国大会58冠。選手権は04年に優勝して以降、07、15年の3位が最高成績だ。父悟さんも同校バスケ部OBだけに古豪復活への使命感は人一倍強い。「走るバスケは伝統。それは留学生がいる相手にも、世界にも通用する。今年はさらに外からのシュート力もあって幅は広がった」。今日26日の3回戦はセネガル、リトアニアの留学生を擁する桜丘(愛知)と対戦。伊東を中心に、パス、アシスト、シュート、すべてで集大成を示す。【鎌田直秀】