伝統の一戦が、新しい国立競技場のラグビー“こけら落とし”になる。

関東対抗戦2位の早大は、関西1位の天理大に52-14で大勝。11年ぶりの日本一を目指し、11日の決勝(午後2時半開始、国立)に進んだ。関東対抗戦1位の明大は、関東リーグ戦1位の東海大に29-10で快勝し、連覇に王手をかけた。早大と明大の決勝対決は96年度以来23大会ぶり。旧国立に多くのドラマを残した早明が、新たな歴史の扉を開く。

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後半18分、早大フランカー相良が左中間に飛び込んだ。序盤21-0から28-14と追い上げられる嫌なムードを断ち切り、勝利を決定づけるトライ。「目の前が開いた。決めることができてよかった」。父でもある相良監督に勝利をプレゼントし、笑顔で話した。

圧勝だった。関西リーグで全試合50点以上取ってきた天理大を2トライ、2ゴールの14点に抑えた。逆に8トライを奪う猛攻。明大に屈した対抗戦時から攻撃のバリエーションを増やし、進化した姿をみせた。「試合を通して、チームが成長した」と相良監督は目を細めた。

昨年の1月2日、準決勝で明大に敗れた。その時から「決勝進出」、20年1月11日がチームの目標になった。さらに、昨年11月には決勝会場が国立競技場に決まった。「それは、うれしいです。この巡り合わせに感謝したい」。自身も国立で9回プレーしている相良監督は、笑顔で言った。

旧国立競技場は14年に解体。今の選手に国立でプレーした選手はいない。SH斉籐主将は「うれしいけれど、目の前の試合に集中するだけ」と冷静。もっとも、先輩たちが国立を舞台に演じてきたドラマは分かっている。「国立でプレーする」が目標になった。

父泰治さんが明大で活躍したFB河瀬は「ビデオで国立でプレーする父を見たり、テレビで試合を見たり。新しい国立が楽しみです」。相良は「選手同士の声が届かないことは、父から聞きました。6万(の観衆)はすごいです」。相良監督は「明大にリベンジしたい。その舞台が国立競技場なら最高ですね」と決勝への思いを口にした。

長くラグビー界をけん引してきた早大と明大。74年1月、初めて国立で行われた大学選手権決勝も同カードで早大が勝った。国立は生まれ変わっても、伝統は生き続ける。23年ぶりの決勝対決、ファン6万人の前で新たな国立競技場の歴史が始まる。【荻島弘一】

◆大学選手権の早明対決 1964年に始まった大会で、決勝対決11回を含めて13回ある。通算成績は早大の5勝8敗、決勝は4勝7敗。大学選手権の準決勝と決勝が国立競技場で行われたのは73年度から13年度で、国立での決勝に限れば早大の3勝6敗になる。直近の決勝対決となった96年度は、北島監督死去から8カ月後の明大が優勝。田中監督がSHとしてチームを引っ張った。90年度の決勝には相良監督がフランカーとして出場していた。