新たな「聖地」に、新たな「伝説」が生まれる。国立競技場のラグビーこけら落としとなる大学選手権決勝は11日14時30分、キックオフ。大学ラグビーの歴史を彩る早大と明大が、23年ぶりに決勝で激突する。11年ぶり16回目の大学日本一を目指す早大は10日、最後の練習。明大の紫紺のジャージーを着せたタックルダミーに熱い思いをぶつけた。明大も2年連続14回目の優勝に向けて、軽く調整。満員の国立競技場が、伝統ある早明の激突に沸く。

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早大上井草グラウンドに張り詰めた空気が流れた。全部員127人の作った円陣の中で、メンバー23人が決意表明。アタック練習では、1本ごとに全部員から拍手が起こる。締めは恒例のタックル。大勢の報道陣と熱心なファン、全部員が見守る中、選手は勇ましい声を張り上げて紫紺のジャージーに体当たりした。

シーズン最後の大学選手権、試合の勝ち負けに関係なく「最後の練習」ができるのは、ファイナリストの特権でもある。決勝進出は優勝した08年度以来11年ぶり、SH斎藤主将は「4年間を思い出して、昨晩は2時まで寝られなかった」と明かした。「儀式」にも見える練習で選手は気持ちを高め、決戦に向かう。101年の伝統を誇る早大ならではの「出陣式」だ。

8日には、斎藤主将らと国立競技場を視察したSO岸岡は「インゴールが狭い(奥行き6メートル)ので、そこを狙うキックは無理」と、陸上トラック併設の難しさを口にした。斎藤も「幅が狭いと感じた」と規定ギリギリの68メートルしかないグラウンドを評した。未知の会場だけに、不安もある。

現役時代に何度も国立の芝を踏んだ相良南海夫監督(50)は「この巡り合わせは、早稲田にも明治さんにとっても、よかった」と、しみじみ話した。1年生で唯一先発する監督の次男でフランカーの昌彦も「昔、父の試合のビデオで国立は見ています。6万人の前で試合がしたい、正直、楽しみです」と笑った。新しい時代、令和の初代王座を目指して、早大が新しい「聖地」国立に乗り込む。【荻島弘一】