国立競技場にラグビーが帰ってきた。早大が明大を45-35で下し、11大会ぶり16度目の大学日本一になった。相手有利の下馬評を覆す前半31-0で滑り出し、後半は2連覇を狙った明大の反撃に苦しみながら逃げ切った。

国立での早明決勝は23シーズンぶり。帰ってきた聖地、復活した伝統カードに5万7345人が感動し、令和の初代王者が誕生。伝説が再び始まった。

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生まれ変わった国立に早大の「荒ぶる」が響いた。大学選手権を制した時にしか歌えない第2部歌。四方を6万弱の観衆に囲まれながら、SH斎藤主将が、相良監督が、127人の部員とスタッフ全員が円陣を組んだ。11季ぶりの絶唱。胴上げもされた主将が「4年間の努力を肯定できた」と喜べば、監督は「自分の卒業時に歌えなかった『荒ぶる』が聴けて感無量」。聖地に強い早稲田が戻った。

前半は31-0。9分に斎藤のPGで先制し、3分後にNO8丸尾が国立初トライ。SO岸岡はDGを2連続で狙った。「時間と体力を奪う作戦」が、さらに明大を惑わせる。3連続トライ。父弘光さんも早大で日本一のフッカー森島、相良監督の次男で1年生フランカーの昌彦も続いた。後半は一転、前年王者に意地の5トライを許したが、33分には2人が倒れて13人になるピンチも、しのいだ後のスクラムから丸尾が持ち出し、最後はWTB桑山が突き放した。雌雄が決した。

創部100周年を迎えた昨年、元主将の相良監督が就任した。卒業後は監督として三菱重工相模原をトップリーグに昇格させた男の第一声は「主役は君たち、学生だ」だった。主体性を求めて昨年度は8年ぶり対抗戦V。今年は胴上げで3度、宙を舞った。「6万近い観衆の中、国立でやれて本当に幸せだった。いつも話していたが、いろんな巡り合わせの中で明治さんとやれた。そして勝利できた。うれしい」と喜んだ。

昨年度は大学選手権準決勝で明大に敗れ、今年度は1カ月前の対抗戦全勝対決で7-36と屈辱にまみれた。そこからの40日間でタックルを再確認。斎藤は「ディフェンスの部分が40日前の早明戦とは変わった。1対1のタックルが前回と違った。タックル練習を増やしてセットのポジション…僕らは『勝ちポジ』と呼んでいるんですが、その意識づけをしてきた」と胸を張った。前半完封してみせた。

1年からレギュラーの岸岡、186センチ、98キロのCTB中野との息も完璧だった。その中野が負傷で不在だった対抗戦は完敗を喫したが、復帰したことでマークも分散した。集大成の1年。反骨のアカクロが令和初の日本一になった。