【メルボルン=吉松忠弘】世界4位の大坂なおみ(22=日清食品)が東京オリンピック(五輪)イヤーの4大大会初戦を快勝で飾った。

2連覇に向け開幕戦に登場。ネットの留め具を壊す破壊力抜群の弾丸サーブを武器に、同59位のマリエ・ブズコバ(チェコ)に6-2、6-4の80分でストレート勝ちした。7本のサービスエースを決め、力の差を見せつけた。2回戦で世界42位の鄭賽賽(中国)と対戦する。

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東京五輪に向けた今季4大大会開幕戦で、とんでもないパワーを見せつけた。第2セットの第2ゲーム。大坂が放った時速183キロの第1サーブがネットを直撃すると、低くなっていたネットの抑えが外れ、飛び上がった。

中央の白いストラップと、コートから伸びる金属製の棒をつなぐ金具の口がぱっくり開いていた。そのためストラップが外れた。大坂は「あら、ごめん」と苦笑い。その前に、時速189キロ、同179キロの連続エースをたたき込み、威力は全開に達していた。

そのパワーで昨年100位近く世界ランクを急上昇させた相手を蹴散らした。第1セットは1-2から5ゲーム連取、第2セットは2-4から4ゲーム連取でけりをつけた。「少しナーバスになったけど、とてもハッピーよ」と笑みがこぼれた。

ウィム・フィセッテ新コーチにとっても、大坂との4大大会初陣だった。第2セットにリードを許す場面もあったが「おおむね満足している」と合格点を出した。4大大会で初めて家族席に入った父フランソワさんも「エヘヘヘ」と笑いが止まらなかった。

試合を控えた朝の練習後だった。フィセッテ・コーチとベンチで約5分ほど話し込んだ。同コーチはデータ分析の第一人者。自分のノートに書き込んだデータを大坂に説明し、最後に紙に書かれたメモを渡した。大坂がお願いした“魔法”のメモだった。

「時々、メモは持ち込む。ただ、今回は4大大会。たくさんのアドバイスがあると、覚えてられないんだもの」。内容の詳細は明かさなかったが、リードを許した第2セットに威力を発揮した。メモを読み、逆転につなげた。その冷静さも成長の証しだった。

昨年9月の東レ・パンパシフィックから16試合を戦い、まだ1敗しかしていない。「1回戦から完璧にプレーしなくてもいい。徐々に調子を上げていけばいいんだと学んだ」。落ち着きの先には、13年アザレンカ以来9人目の2連覇が待っている。

◆全豪女子シングルス2連覇以上の記録 68年オープン化(プロ解禁)以来、2連覇以上を達成したのはコート(オーストラリア)、グーラゴン(オーストラリア)、グラフ(ドイツ)、セレシュ(米国)、ヒンギス(スイス)、カプリアティ(米国)、S・ウィリアムズ(米国)、アザレンカ(ベラルーシ)の8人。また、4大大会全史で2連覇以上の回数はウィンブルドンが24回、全米が22回、全豪が21回、全仏が11回となっている。

◆テニスの東京五輪出場権 全仏直後の20年6月8日の世界ランキングで、シングルスは各国最大4人まで、計56人が選ばれる。もし欠場者が出なければ、世界ランキングのカットは、70位前後と見られる。それ以外にも過去4年間で、国別対抗戦のデビス杯(男子)かフェド杯(女子)で、その国の代表に数回、選ばれている必要がある。大坂は残り1回、代表回数が足りていない。

◆テニスのネットの高さと留め具 テニスのネットは、両端の高さが1・07メートル。真ん中がストラップを使い高さを抑え、0・914メートルとなっている。ボールの直径で見ると、2個分以上の差がある。ストラップは幅が最大5センチまでで、色は白と決まっている。そのストラップは、コートとつながっている金属の棒と、金属の留め具でつながっている。その留め具の留めてある部分が、大坂の弾丸サーブで壊されてしまったようだ。

◆WOWOW放送予定 21日午前8時50分から。同午後4時45分から。ともにWOWOWプライム。男女シングルス1回戦ほか。生中継。無料放送。大会第2日はWOWOWテニスサイト・WOWOW公式YouTubeで無料配信