宣言通りの王座奪還だ。男子1万メートルは18年全国覇者の蟻戸一永(白樺学園3年)が大会記録(11年、土屋良輔)を14秒38更新する13分39秒44で完勝した。

23日の5000メートルに続く全国王者に輝いた。高校ラストイヤーで初の全国2冠を果たし「2冠はしたことがないので非常にうれしいです」とはにかんだ。

志願の出場だった。2種目で金を獲得したユース五輪から18日に帰国。疲労を考慮され、当初は1万メートルには出場登録されなかったが5000メートルの走りを見た和田貴志監督(43)が前夜の夕食後に「1位を取るなら走っていい」と提案。蟻戸は「出ます」と即答した。レースでは6000メートルを超えたあたりから膝に手をつき、苦悶(くもん)の表情。それでも地元開催でチームメートからの声援に背中を押され「最後全力を振り絞るしかない」。2位に10秒35差をつける圧勝劇だった。

中学時代は全国制覇の経験がなく、同学年でチームメートの野々村太陽の後塵(こうじん)を拝した。それでも当時から攻めるスタイルを変えずに自分のスケートを確立した。「入学当初はむちゃくちゃだったけど、レースの組み立てもできるようになった」と同監督。屋外リンク開催の12月全道では2位。屋内での戦いを見据えて、あえて滑りを変えずに全国に照準を定めてきた。

月末の30日からは国体、来月21日には世界ジュニア選手権(ポーランド)が控える。蟻戸は「今後上のレベルで戦う上で連戦は経験になる。どの大会でもベストの滑りをしたい」。高校2冠の自信を胸に、世界に羽ばたく。【浅水友輝】