2連覇を目指す神戸製鋼が、トップリーグ(TL)史上最大得点差で開幕4連勝を飾った。

NTTドコモに15トライを浴びせ97-0の大勝。入団2季目のトンガ出身NO8タウムア・ナエアタ(26)が、個人の1試合最多トライ数(6本)に迫る5トライを記録する大暴れ。3トライ差以上のボーナスポイントも獲得し、同じく4連勝の首位パナソニックと勝ち点2差の2位に浮上した。

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まさにナエアタの独壇場だった。33-0の前半38分。右手だけでボールをつかみ、敵陣深くで前へ進んだ。193センチ110キロの左半身で2人のタックルを退け、3本目のトライ。記憶にない1試合5トライで衝撃を与え、日本語で喜んだ。

「今日は私とお母さんの誕生日。お母さんの誕生日プレゼントになりました」

左手首の白のテーピングには、黒のマジックで「HBD MUM」と記した。母レシエリさんの56歳の誕生日。同じ日に26歳となった自分より、トンガで暮らす母へ吉報を届けたかった。6年前、流通経大入学を機に来日。母国で警察官として働く父オペティさん(54)の影響で、幼少期からテニス漬けの日々を送った。テニスでも15歳以下のトンガ代表として、サモアと国際試合を戦うほどの腕前。15~16歳の頃に友人がしていたラグビーを始めると、人生が大きく変わった。

本職はロック。昨季はリーグ戦2試合の出場にとどまったが、今季はNO8として4試合連続で先発を守っている。ディロン・ヘッドコーチは「NO8で素晴らしいパフォーマンス。それに尽きる」。トンガの隣町で育ち、同じ流通経大出身の19年W杯日本代表プロップ中島も「(代表に)なれると思う。『なれる』んじゃなく『なる』」と持ち味の突破力を認めている。

今季7トライはWTBヘンリー(トヨタ自動車)と並んでリーグ最多。注目度は急上昇中だ。U-20(20歳以下)トンガ代表歴があり、日本代表入りは資格の関係で不透明。それでもはっきりと言い切った。

「もし、日本代表に選ばれたら行きたい。選ばれなかったらトンガ。トライ王は狙いません。神戸のプレーをしてチャンスがあれば(タイトルを)とりたい」

狙うは2連覇。今年はピッチ上で笑う。【松本航】