男子回転では、日大山形・高田隼之介(3年)が小学6年のジュニアオリンピック(北海道開催)以来の全国優勝を手にした。出場した全169人中でトップ滑走という大注目の中で、1本目はただ1人の50秒(05)台をマーク。2位と1秒18差でラップタイムを奪い、2本目も手堅くまとめて合計1分45秒08で逃げ切った。東北勢の今大会優勝は、5日のノルディック男子複合の花輪(秋田)木村幸大(3年)に続いて2人目となった。

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日大山形・高田が新雪を味方につけた。日本中で雪不足が深刻される中、競技会場の妙高市では一昼夜で60センチ以上の積雪があり、1日の降雪量としては2月の同市記録を更新。午前9時開始予定から10時開始に変更されたが、高田は重圧のかかる1番滑走でも「緊張というより、プラスに考えていた。雪が軟らかくて、くじ運がよかった。緊張はしていなかった」と、ゴールに向かって勢いよく飛び出していった。

1本目は誰にも荒らされていないコースを思うがままに滑り降り、「1番スタートでミスもなく、これは1位かな」と1秒以上もラップを奪って2本目へ。1本目の上位30人からタイム逆順となる2本目は最終滑走の30番目で55秒03とロスしたが、1本目の大量リードもあり、自身6年ぶりの全国優勝を決めた。「長い間、周りの人に支えられていたので、やっと優勝できてうれしい。感謝しかないです」と笑みがこぼれた。

出身は長野・信濃町。隣接する妙高市からは約30分の距離にあり、小学生の時は学校行事や大会でこの日の会場を利用した。長野には名門高校スキー部が複数あるが、日大山形へのスキー留学を決意。最後の高校総体の舞台で、慣れ親しんだ舞台に戻って躍動した。「親をはじめ、高校で山形に行って迷惑をかけた分、恩返しができてうれしいです」と率直な思いを述べた。

今後の進路は未定だが、卒業後もスキーは続け、FISレースに参加して世界レベルで戦うつもりだ。「将来はオリンピックで優勝できるように頑張っていきたい」。未来の日本代表へ。名前の「隼(はやぶさ)」のように、ゲレンデを疾走する。【相沢孔志】