【ソウル6日】フィギュアスケート4大陸選手権(韓国)は7日、木洞アイスリンクで男子ショートプログラム(SP)を迎える。3年ぶりの出場で初優勝を狙う羽生結弦(25=ANA)は23番滑走に決定。前日6日は公式練習で9日のフリーの演目をテスト。今大会から戻す、18年平昌オリンピック(五輪)の金メダル獲得プログラム「SEIMEI」の令和版を初披露した。ルール改正で4分半から30秒短縮された時間をジャンプ間の助走で削るなど違いが見えた。

羽生の新・伝説プログラムがベールを脱いだ。一般非公開の練習用リンク。その静寂を太鼓と笛の音が切り裂いた。冒頭のルッツを2回転にとどめるなど軽めの通し稽古となったが、進行は演目通り。サルコー、アクセルからフリップにつないだ。「SEIMEI」を競技会で舞うのは平昌五輪以来2年ぶり。そこでは3本だった前半のジャンプを4本に、お色直しした。

昨季のルール改正でフリーの演技時間は4分30秒から4分に短縮。ジャンプも8本から7本に減った。五輪2連覇プログラムをそのまま復活させられない。どう凝縮するか注目されていた中、詰めたのは助走だった。ジャンプ3本目の1回転半(本番は3回転半)着氷から、4本目の3回転フリップ踏み出しまでの間隔は約4秒。その間わずか3歩で跳んだ。開演から前半のジャンプを跳び終えるまで平昌では3本で58秒だったが、今回は4本で1分ジャスト。ほぼ同じ時間にまとめ、後半のジャンプが5回から3回に減った分も合わせて時間を削りだした。

年明けに再導入を決めた後、振付師シェイリン・ボーンさんとカナダ・トロントの拠点クリケットクラブで再構築してきた。ほぼ助走なしの3歩で跳べるのも羽生だから。健在の身体能力で30秒を縮めた一方、開始から1本目までの時間は平昌21秒→今回22秒、2本目も20秒→21秒と守って表現の余地は残した。氷に手をついて滑るハイドロブレーディングもイナバウアーも、見せ場はそのままだ。

加えて、平昌では右足首負傷明けの影響で回避した現在最高難度の4回転ルッツを、本番で組み入れる。4回転も2種4本から3種4本へ進化。スピンも、わずかながら点数が上がる構成に磨きなおした。基礎点1・1倍になる後半3本のジャンプも、すべて難易度の高い連続で勝ちにいく。

昨年12月の全日本エキシビションで舞い、プログラム復活の決断に至った「SEIMEI」。前日に「力を借りた時、ものすごく『自分でいられるな』と思った」という名演目を曲かけで通した後は、4回転サルコーなどを気分よく成功させた。令和版、その骨格は見えた。まずは7日SPで「バラード第1番」を成功させ、9日フリーで全容をお披露目する。【木下淳】