【カルガリー(カナダ)=矢内由美子】小平奈緒(33=相沢病院)が女子500メートルを36秒65で制し、W杯の同種目で通算27勝目、前日の1000メートルと合わせて32勝目を飾った。

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得意のアウトコースからスタートした小平が、100メートルを全体1位の10秒32で通過する。最終コーナーの出口で膨らんだものの、最後の直線で同走のゴリコワをかわしてフィニッシュ。36秒65の好タイムで優勝すると、控えめながら拳をギュッと握り、満足感を漂わせた。W杯2日連続優勝は今季初だった。

レース後は「第2カーブでもう少し氷と一体化すれば、もっと伸びていたと思う」と振り返ったが、特段悔しがる様子はなかった。むしろ、「先週のトライアルではインスタートで滑って36秒9だった。インもアウトも滑って世界距離別選手権(ソルトレークシティー)の良い予行演習になった」と手応えが大きい様子だ。

思い出深い地での優勝でもあった。昨年3月のこと。ソルトレークシティーでのW杯ファイナルで“世界最速”への好感触をつかみながら記録達成がかなわなかった小平は、翌週カルガリーへ飛び、男子のレースに参加。非公認ながら、李相花(韓国)の持つ36秒36の世界記録に肉薄する36秒39を出した。今回はそのときと同じアウトスタート。良いイメージを増幅させて世界距離別選手権に向かうことが出来るはずだ。

表彰式では、五輪の金銀銅メダリストであり、このほど現役を引退したカナダ中距離界の英雄、デニー・モリスン氏からメダルを授与され、いつも以上に笑顔が弾けた。

「“デニ・モリ”は私の1歳上。次のキャリアも頑張ってね、と言えたのですごく感慨深かった」と言って瞳を潤ませた。小平は33歳。W杯通算32勝となり「年齢まであと1勝ですね」と笑った。

さあ、次は世界距離別選手権。結城コーチは「評価には順位という相対評価と、記録という絶対評価の軸がある。絶対評価の軸の目盛りが1つでも進化できればいい」と期待を寄せる。小平は「意気込みすぎず自然体で、そのときに出合う反応を楽しみたい」と言う。最速への挑戦がまたやってくる。