金戸家の東京オリンピック(五輪)挑戦が終わった。祖父母、父母に続く五輪出場を目指した金戸凜(16=セントラル)は女子板飛び込みで4位。五輪最終予選を兼ねるワールドカップ(W杯)東京大会(4月21~26日)代表を逃して、東京大会での「親子3代五輪出場」はなくなった。

同種目は五輪出場が内定している三上紗也可(19)と2位に入った榎本遥香(23)、男子高飛び込みは1位の玉井陸斗(13)と2位の西田玲雄(19)がW杯に派遣される。

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プールサイドの父母とスタンドの祖父母に見守られて、金戸は飛んだ。難度差もあって、上位との差は広がる一方。5本目を終え、コーチの父恵太氏(52)の胸に顔を沈めた。「ひたすら泣いていました。よく頑張ったと思います」。父は苦しかった東京五輪への道を振り返って言った。

昨年、得意の高飛び込みで世界選手権初出場。予選5位で準決勝に進み、12位以内の決勝進出で決まる東京五輪代表の座も見えていた。しかし、準決勝の1本目で右肩を負傷。18人中17位で、東京五輪に向けてケガとの闘いも始まった。

9月の国体は亜脱臼で途中棄権。11月にも練習中に起こした。演技の際に腕を振っただけで肩が外れる。「無理」と判断した父は12月に「負担の軽い」板飛び込み専念を勧めた。踏み込んで反動を得る板飛び込みは筋力のない16歳には不利だが「本人にはつらい決断だろうが、将来を考えた」と悩む金戸を説得した。

腕が振れないために技の難度を落としたが、1月には再び亜脱臼して3週間練習できず。「精度を上げる時間が足りなかった」と父は話した。試合後、金戸は報道陣の前に姿を現さなかった。父は「申し訳ありません。質問されたことに答えられる自信がない」と代わって話し「すぐに手術をさせます」と明かした。

東京での「3代出場」は逃したが「東京はギリギリだった。選手としていいのは次」と父。祖母久美子さんの五輪初出場は60年ローマ五輪で23歳、母幸さんは88年ソウル五輪の19歳。金戸には次がある。「リハビリを頑張って、なるべく早く高飛び込みができるように」。親子3代五輪出場の夢はパリに持ち越された。【荻島弘一】

○…スタンドで見守った祖父俊介氏は「めいっぱいやった結果だから、仕方ないです」と笑顔で話した。次女の凜とともに出場した長女華(21)は9位、長男快(18)は男子高飛び込みで11位だったが「3人の孫の演技を大舞台で見られて幸せです」。祖父母は60年ローマと64年東京、父母は88年ソウルからともに3大会連続。「パリで頑張ってほしい。それまで元気でいたい」と、延べ11回目となる金戸家の五輪出場に向けて話していた。