全日本柔道連盟(全柔連)の金野潤強化委員長(52)は11日、グランドスラム(GS)パリ大会男子100キロ超級で、五輪2連覇中のテディ・リネール(30=フランス)を破った影浦心(24=日本中央競馬会)を称賛した。

GSパリ大会の視察を終え、成田空港に帰国した金野氏は「最重量級で1つ時代が進み、リネール選手の1強時代から戦国時代というか、新しい時代の扉が開いた気がする。影浦選手が準備してきたことが結果につながり、その場面を現地で見られたことは大変うれしかった」と感慨深げに振り返った。その一方で「負けず嫌いのリネール選手は、今回の敗戦で火がついたと思う。今の状態で東京五輪に出てくるとは考えていないし、必ずもう1度やり直してくるはず」と警戒心を示した。

男子100キロ超級は近年、10年間負けなしで国際大会154連勝中だった「絶対王者」をターゲットにめまぐるしく変化していた。16年リオデジャネイロ五輪後のルール改正もあり、動けて技も切れる「スプリンター系」が優位となっている。18年世界王者のトゥシシビリ(ジョージア)や、100キロ級から転向した19年世界王者のクルパレク(チェコ)らが台頭。そこに、リオ五輪銀メダルの原沢久喜(百五銀行)や影浦らが加わる。

東京五輪代表争いを巡り、影浦は原沢を追う2番手。金野氏は、今大会で「絶対王者」を撃破したことは「もちろん評価に値する」としたが、五輪代表は「1年間の試合をトータルで見ている。国内外の試合を総合的に判断し、最終的に選考していきたい。GSパリの勝敗も選考には関わってくるが、あくまでも総合的に判断する」と強調した。

全柔連は、東京五輪代表選考において「3段階」の選考方法を導入。GSデュッセルドルフ大会(21~23日)後の27日に強化委員会を行われ、代表が決まる可能性がある。

 

◆柔道の東京五輪代表選考 男女各7階級1人で、選手の準備期間確保を重視した「3段階」による選考で決める。(1)19年世界選手権優勝者が同11月のGS大阪大会を制し、強化委員会で出席者の3分の2以上の賛成で代表入りが決定。女子78キロ超級の素根輝(そね・あきら)のみが内定(2)同12月のマスターズ大会(中国)、2月のGSパリ大会、GSデュッセルドルフ大会終了時点で、強化委の3分の2以上が1、2番手の差が歴然としていると判断すれば代表選出(3)最終選考は4月の全日本選抜体重別選手権で、強化委の過半数の賛成で代表決定する。