【デュッセルドルフ=峯岸佑樹】男子66キロ級で逆転での東京オリンピック(五輪)代表を狙う17、18年世界王者の阿部一二三(22=日体大)が優勝し、望みをつないだ。

1番手の19年世界王者の丸山城志郎(ミキハウス)を猛追し、最終選考会である4月の全日本選抜体重別選手権(福岡)までもつれる見込み。同じく制覇した女子52キロ級世界女王の妹、詩(日体大)と、男子60キロ級の高藤直寿は五輪代表が決定的となった。準優勝だった女子48キロ級の渡名喜風南(ともにパーク24)も実績から初五輪が濃厚となった。

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元世界王者が意地を見せた。阿部は決勝で、ジョージア選手を大内刈りからつないだ豪快な大腰で一本勝ち。途中、左手親指を負傷する影響などもあり、準決勝までは苦戦したが、最後は豪快な柔道で勝利して安堵(あんど)の表情を浮かべた。「無事、優勝できたことが素直にうれしい。意味のある優勝だと思うが、これで終わりたくない」。

負けられない重圧から、準決勝までの5試合は動きが重かった。密着攻撃を仕掛けてくる相手の袖や襟をつかめず、技を受ける場面が多く見られた。決勝では常に前に出て圧をかけることを意識し、持ち味である豪快な柔道につなげた。

五輪代表争いでは、左膝の故障で欠場した丸山を追う。選考で生き残るためにも、今大会の優勝は「絶対条件」だった。男子代表の井上康生監督は「(2人は)並んだような状況」と説明し、最終選考会である4月の全日本選抜体重別選手権で最終決着となることを示唆した。通算3勝4敗のライバルとの直接対決へ、阿部は「体を作り直し、ぶつけるだけ。絶対に勝って(代表権を逃した)リオ五輪の悔しさを東京で返す。燃える気持ちがずっと心の中にある」と気合十分だ。

女子52キロを制した妹の詩は、一足先に五輪代表が決定的となった。兄妹優勝は18年9月の世界選手権バクー大会以来だった。「(妹の活躍は)刺激になるけど兄として負けていられない。しっかりと兄妹で五輪優勝という目標を達成したい」。22歳の柔道家が妹との夢をかなえるため、夢舞台への切符をつかみにいく。

◆阿部一二三(あべ・ひふみ)1997年(平9)8月9日、兵庫県生まれ。6歳から柔道を始める。兵庫・神港学園高2年の時、17歳2カ月の史上最年少で講道館杯を制覇。17、18年世界選手権優勝。世界ランク8位。得意技は背負い投げと袖釣り込み腰。今春からパーク24に入社予定。尊敬する人は野村忠宏。好きな食べ物は肉。家族構成は両親、兄、妹。168センチ。

◆柔道の東京五輪代表選考 男女各7階級1人で、選手の準備期間確保を重視した「3段階」による選考で決める。(1)19年世界選手権優勝者が同11月のGS大阪大会を制し、強化委員会で出席者の3分の2以上の賛成で代表入りが決定。女子78キロ超級の素根輝のみが内定(2)同12月のマスターズ大会(中国)、2月のGSパリ大会、GSデュッセルドルフ大会終了時点で、27日に行われる強化委の3分の2以上が1、2番手の差が歴然としていると判断すれば代表選出(3)最終選考は4月の全日本選抜体重別選手権で、強化委の過半数の賛成で代表決定する。