東京オリンピック(五輪)・パラリンピックが1年延期となり、男女各3人を選ぶアーチェリーの代表選考が宙に浮いた状態になっている。既に選考会で敗れて代表入りを逃した84年ロサンゼルス五輪銅、04年アテネ五輪銀メダリストの山本博(57=日体大教)も、今後の動向に関心を寄せている。同連盟は理事会で対応を協議するとしているが、選考会中止か延期かはいまだ不透明だ。固唾(かたず)をのんで見守る選手たちへのアドバイスを、山本から聞いた。

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山本は昨年11月の1次選考会で16人中15位に終わり、自身6度目の五輪出場を逃した。選考会で敗れた後も、日体大でアーチェリーの研究に余念がない。再び国内トップ選手となり、24年パリ五輪代表の座を勝ち取ろうと気合十分だ。教え子の河田悠希は東京五輪の代表最終選考に進むなど、愛弟子の活躍にも刺激を受けている。

-新型コロナウイルスの影響で先行きが見通せない

山本 日体大では授業開始日をいつにするか議論がされたり、会長を務める東京都体育協会では今春予定の事業が中止や延期になったり。新型コロナの影響で対応に追われている。

-そんな中で東京五輪・パラリンピックが延期となった。

山本 選手のことを思いやった決断だ。補欠だったモスクワ大会の時に、ボイコットされたのを思い出した。代表内定選手の怒りはとてつもないものだった。本当に出場できないことが分かると、心が折れて嘆きに変わっていった。

-1年延期となったことで選手への影響は

山本 選考のあり方がどうなるのか、気が気でないはずだ。代表内定選手ならそのまま維持されるのか、選考途中の選手なら今後はどうなるのか。体作り以前に、何よりもまず競技に臨む上でのメンタル面が心配。延期をどうやってポジティブに捉えるか大変だ。

-日体大時代に担任を務め、開講するゼミの履修生だった河田が最終選考に進んだ

山本 (河田には)日本アーチェリー界の第一人者に君臨することが、メダルへの近道だと伝えている。「今年だったらメダルが取れた」「来年だったら-」と言っている人は、二流の考え。毎日計画を立てて練習に励み日本トップの座を勝ち取ってこそ、メダルが見えてくる。

-自身は既にパリ大会を目指すと宣言している

山本 アーチェリーを通じて人間の能力がどうしたら向上するか探求している。その面白さに取りつかれ、45年間続けてきた。積み重ねを怠らず、第一人者に返り咲きたい。

【聞き手=平山連】