柔道の18年世界選手権女子78キロ超級金メダルの朝比奈沙羅(23=パーク24)が9日、栃木県壬生町の独協医大医学部の学生証授与式に出席した。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、同大は政府が発令した「緊急事態宣言」の対象区域外だが、当初7日に予定していた入学式を中止し、規模を縮小した学生証授与式のみを行った。朝比奈は検温、マスク着用などの感染予防して授与式に参加後、所属のパーク24を通じてコメントを寄せた。

「今日から獨協医科大学医学部学生の一員となり、医師への道の第一歩を踏み出したことをご報告させて頂きます。勉学では、東海大学体育学部の頃に学んだこと以外に、新たに医学部教育が始まることの期待と心配が入り交じっておりますが、自分の“やりたかったこと”を専門的に習えること、そして自分自身では叶えられるか分からなかった大きな夢が現実的な目標に変わってきた実感があり、非常にワクワクしております。医学部生としての生活が始まると同時に、私にとっては人生で2度目の大学生活がスタートします。歳の離れている友人との輪を広げていくことにも若干の不安がありますが、持ち前の明るさと笑顔で同級生と共にどんな困難でも笑い飛ばして、みんなで良医を目指していけたらと思っています。将来の道は未だ漠然としており、研修医の時期に渡り歩いた科によって進路は変わってくると思われますが、現時点では整形外科・麻酔科・小児科などを将来進む道として考えています。ただし、まずは留年することなく6年間で卒業すること、そして医師国家試験に合格することが目標になります。先ばかり見据えるのではなく、一歩一歩着実に自分の夢を叶えるための努力をしていきたいと思っております」(原文のまま)

文末には、新生活が始まるにあたりスローガンを掲げた。「“闘う医学生”。私は、このスローガンを念頭に1日1日を大切に過ごして参ります。今後も引き続き、応援のほどよろしくお願い致します」と、柔道家兼医学生として決意を新たにした。

朝比奈は医師の両親を持ち、幼少期からの夢が五輪金メダルと医師だった。進学校の東京・渋谷教育渋谷高3年時に柔道の強豪東海大を受験。医学部は不合格となり、一般受験で体育学部に入学した。文武両道の先駆者を目指し、「二刀流」を貫くことで柔道と医療関係者から批判の声もあったが、夢をかなえるための強い決意を胸に、東海大入学後も独自の道を歩み続けた。東海大4年の18年春頃から日本代表の国内外の遠征などと並行して、1日2時間の勉強のほか、医学部進学予備校に週2日通った。昨年10月、同大医学部医学科のAO入試に受験し、合格者5人の狭き門を突破した。今後は栃木県内に住みながら勉学と柔道の両立を目指す。来週から当面の間、インターネットでの遠隔授業に臨む。

女子78キロ超級の東京五輪代表争いでは、昨年11月に19年世界女王の素根輝(そね・あきら、19=環太平洋大)が内定したが、五輪の1年延期に伴い、全日本柔道連盟では再選考も含めた代表選考について議論している。東京五輪後に引退を明言してい23歳の元世界女王は、これまで「最後まで何があるか分からない。1%でも可能性がある限り、それを信じて柔道を続けたい。そして、結果はどうあれ、最後は自分自身へ人生の金メダルを与えられるぐらいの人になりたい」と話していた。【峯岸佑樹】