大きな瞳を輝かせ、未来に希望を抱く。ノルディックスキー・ジャンプ女子の渡辺陽(みなみ=22)が、社会人として新たなスタートを切った。4月から東部ダイハツ所属となり、車の販売営業をしながら競技を続けている。採用が決まったのは東海大北海道卒業が迫る2月。「なんとかひとまず良かった。安心です。環境が変わり、どうなるかまだ分からないけど、いけるところまでいきたい」。世界舞台での活躍しか思い描いていない。

飛び込み営業がかなった。1月、同社の筧陽介社長(41)に連絡して父と2人で採用を直接交渉した。18年、プロ野球日本ハムによる次世代スポーツ人材育成型クラウドファンディング「FIGHTERS CROWDFUNDING~Be Ambitious」の第1号選手だった渡辺は、球団イベントで対面した同社長と顔見知りだった。そのわずかな可能性のツテにかけ、見事に実った。同社長は「前向きに頑張っている姿がすてきだと思い、応援したいという気持ちが芽生えた。世界で東部ダイハツの看板を背負って飛んでもらいたい」と、サポートを決めたという。

19-20年シーズンは序盤は雪不足で練習場所に悩まされ、終盤は新型コロナウイルスの影響で大会が軒並み中止。大学の卒業式もなく「(シーズンが)あっけなく終わった」。不完全燃焼だった。「このままでは終われない」と、現役引退は全く考えなかった。

今後は母校東海大北海道の練習に参加する。目標は「もちろんオリンピック。なんとか4枠の中に食い込んでいけるように」と、22年北京大会を見据える。まずは16年以来のワールドカップ(W杯)出場を狙う。持ち味を「風があっても怖くないタイプなので、イケイケでいける」と、所属先も自らたぐり寄せた大胆さを、ジャンプでも見せる。【保坂果那】

◆渡辺陽(わたなべ・みなみ)1997年(平9)9月5日、札幌市生まれ。札幌西野第二小3年から競技を始める。札幌西野中から札幌日大高、東海大北海道に進学。高校時代は総体(女子は公開競技)で連覇。W杯出場は1度で、16年1月16日札幌大会で31位。左利き。164センチ、52キロ。家族は両親。