NBAウィザーズの公式特派員を務めるザック生馬氏(45)が、日刊スポーツの電話取材に応じた。

日本語と英語を操るバイリンガルリポーターとして、チームのツイッター日本語アカウントを日々更新。八村塁(22)に密着し、活躍ぶりを国内外に発信し続けてきた。その日本人ルーキーの素顔や、コンテンツ制作現場の裏側を語った。【取材・構成=奥岡幹浩】

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-先週はチーム公式ツイッターアカウントで八村インタビューを生配信した

ザック 聞き役を務めさせてもらった僕にとっても、楽しいひとときだった。シーズンが中断しているいましか聞けないような話を、じっくりたっぷり話してくれた。インターネット経由とはいえ、お互いの顔を見ながらコミュニケーションを取れたこともうれしかった。反響も大きく、視聴者の内訳を見ると、ウィザーズが大事にしている日本のファンからのアクセスが非常に多かった。

-八村は今季41試合に出場。1年目から存在感を示した

ザック ブルックス・ヘッドコーチ(監督)に先日インタビューしたが、特に評価していたのが安定感。いきなり開幕戦でダブルダブルをマークして鮮烈なデビューを飾ったが、それで終わりではなく、シーズンを通じて先発起用されて結果を残してきた。

-八村はチーム内ではどんなキャラクターか

ザック 明るい性格で、愛されキャラ。ビール選手のようなベテランの前ではおとなしくて優等生的な振る舞いをする一方で、同年代の選手と一緒のときはすごく社交的。ある若手選手は、塁は本当におちゃめだと評していた。勝利直後のシャワールームで、裏声のようなボイスを発しておどけていたこともあった。

-試合前後の報道対応を重ねる中で感じたことは

ザック まずは頭の回転の速さ。相手がどんなことを、なぜこの場で聞きたいのか、その意図をすぐ判断し、的確な答えが返ってくる。英語でのインタビューでも同様のことを感じる。あとは耳がいい。現地の記者が独特のアクセントで、スポーツ専門用語がいっぱい混じった質問をしたさいも、問題なく聞き取ってさらりと答えている。

-いまはどんな環境でコンテンツをつくっている

ザック 数人のチームで制作しているが、リーグ戦が中断された後、3月中旬ぐらいからは完全にリモートワークで行うようになった。チーム内の上司からの要請もあり、実は僕は今月5日に急きょ日本に帰国。先日の八村選手のインタビューは日米間で行った。

-帰国は大変だったか

便数も少なく、普段なら直行便で帰るところを、今回は2度乗り継いだ。乗客が10人もいない飛行機にも乗った。到着したら帰国者全員がPCR検査。結果報告の電話がくるまで10日かかった。

-PCR検査はどんなふうだったか

ザック とにかく痛くて驚いた。検体採取のさい、30センチぐらいの長い棒を鼻に差し込むが、のどどころか脳みそにまで入っていっちゃったのではと思ったぐらい。思わず「痛い痛いっ」と声が出てしまったが、医師からは「我慢我慢我慢」と。涙は出るし、のども痛いしでびっくりしたが、無事陰性と報告を受けてほっとしている。2週間の自宅待機期間もようやく解けたが、引き続き不要不急の外出は控えている。

-引き続きコンテンツ更新を楽しみにしている

ザック リーグ戦再開の見通しが立たない状況で難しい面があるが、少しでも面白い映像つくれるように工夫していきたい。

◆ザック生馬(ざっく・いくま)1974年12月23日、東京都生まれ。三桂所属スポーツキャスター。カナダ人の父と日本人の母を持ち、14歳まで東京で暮らしたあとトロントへ。米ペンシルベニア大卒業後、ニューヨークで俳優活動を行いつつ、日本で放送されるNFL番組の現地リポーターを担当。13年に帰国してプロ野球の実況などを経験したのち、19年よりNBAウィザーズの公式特派員に就任する。