新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全国の学校でも部活動の継続が難しくなっている。全国高校総体に3年連続出場中の八戸学院光星男子バスケットボール部(青森)では、オンライントレーニングを導入し緊急事態に対処している。体育館で自主練習を行う寮生と、自宅待機の生徒をつなぎながら、全国初勝利を目指し合同練習再開の日を待っている。

モニターをとり囲むように選手が集まってきた。画面には自宅にいる仲間たちが映っている。お互いの動きをスマホとモニターで確認しながらストレッチや体幹のメニューを共有する。ボールを使った練習が始まるまでの約1時間と短いが、「みんなの顔を見たら頑張ろうという気持ちになる」と今南央斗(2年)が言うように、確かな一体感が生まれていた。

4月14日から休校が続く。自宅生は通学時に他者と接触する可能性が高いため自宅待機中。学校に隣接する寮で生活する生徒には、外出を極力控えることを大前提に、体育館での自主練習が認められている。緊急事態の中、佐々木彰彦監督(30=東北題字に写真)が思いついたのは、オンラインでの合同練習だった。

名門愛知学泉大出身で就任8年目の佐々木監督は、2年前から積極的にICT(情報通信技術)を導入してきた。タブレットPCやスマホのアプリを活用し、動画でのプレー研究、対戦相手の分析、練習でのシュート数から食事、体調管理に至るまで全てをデータ化してきた。「可視化することで、感覚ではなく言語化できる能力を身につけさせたい。言語化することで全員で目標を共有化できる」と改革を進めてきた。今回のオンライン練習も選手はすぐに順応した。

4年連続出場を目指していた全国総体の中止が決まった。年末のウインターカップは開催の可能性を残すとはいえ、特に3年生のショックは大きい。自宅生の黒沢涼月(りょうが)主将(3年)は、「近い目標がないのでモチベーションをどう保てばいいのか、全員で集まれないのでチームワークにも不安がある」。それでもオンライン練習後には、自宅近くを30分以上走ったり、NBAの動画を見ながら体力と感覚の維持に努めている。花田照永(3年)は「大会がなくなってもこれからの人生にこの経験は生きる。ポジティブに捉えたい」と前を向いた。

一方で下級生たちには自覚が芽生えてきた。芹川颯太(2年)は「自分たちが力をつけて、今からリーダーシップをとってやっていかないといけない」。昨年のウインターカップでは初戦で東海大札幌(北海道)に逆転負け。目標をあえて全国初勝利ではなく16強に置き、強度を高めた練習に取り組んできた。佐々木監督は「正直、今はどこに目標設定すればいいのかわからずかわいそう。でもどんな形でも時間を共有することが大切。いつか大会があるかもしれないし、上のレベルでもやろうという子もいるし」。必ず光が見えると信じ、最善を尽くしながら選手をフォローし続ける。【野上伸悟】

◆佐々木彰彦(ささき・あきひこ)1990年(平2)3月13日、八戸市出身。八戸西高時代に県大会準優勝。3年の秋田国体に下山大地(青森ワッツ)らと青森県選抜で出場。愛知学泉大(愛知)では東海学生リーグ2位、西日本2位、インカレ16強。同大で商業科、八戸大で保健体育の教員免許を取得。目標は「5年以内に明成(宮城)、能代工(秋田)に近づくこと」。