フィギュアスケート男子の鍵山優真(16=星槎国際高横浜2年)が3日までに取材に応じ、正式決定した20-21年シーズンからのシニア転向について初めて語った。

昨季はジュニアながら格上の全日本選手権と4大陸選手権(韓国)で3位と躍進し、日本スケート連盟から本年度の特別強化選手に指定された。22年北京オリンピック(五輪)へ、今季は4回転ジャンプ2種目となるサルコーに挑戦。5日に17歳の誕生日を迎える新星に聞いた。

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新型コロナウイルスの感染拡大下、次代を担う鍵山が最終決断していた。「新シーズンからシニアに参戦させていただきます」。先月、日本スケート連盟理事会で20年度の特別強化選手に承認された。昨季後半から「自分の中では決めていた」転向。五輪2大会出場の父正和コーチ(49)とも考えは一致していたが、ようやく口にできる。全日本優勝の宇野昌磨、2位の羽生結弦とともに最上位の3枠に選ばれ、挑戦者として世界の第一線に身を置く。

濃密な1年間に背中を押された。昨季はユース五輪金メダルに世界ジュニア2位。飛び級のシニアでは全日本と4大陸で3位に食い込んだ。前者は本田武史氏以来、後者は羽生以来となる高校1年での表彰台。「上で戦う自信がついた」一方、V候補だった3月の世界ジュニアは銀メダルと勝ち切れなかった。「ジュニア最後の試合と決めていたので『ノーミスで終えるんだ』と気合が入りすぎて、緊張しちゃって。体が硬直して普段の演技ができなかった」。SP首位もフリーでミスが出て逆転され「この悔しさは一生、忘れられない。来季につなげたい」とシニア転身を決意した。

舞台のエストニアから帰国後も滑り込んできたが、新型コロナ禍が拡大。拠点の横浜市内のリンクが3月下旬に閉鎖された。以降は「1日も滑れていない」とステイホーム。授業は充実したオンライン学習システムを使いこなす一方、トレーニングは制限下で毎日1~2時間。「(5歳から)ずっと氷の上に立ち続けてきたので…」と戸惑いつつ「今は滑りたい気持ちを抑えないと。陸の上で回転の練習をしたり、ジャンプを降りる時に必要な腹筋や背筋を鍛えたり、試合映像を見返したり。練習が再開できた時すぐ動けるよう」イメージを膨らませている。

その中に4回転ジャンプ増プランもある。昨季はトーループ1本で勝負したが「今年はサルコーに挑戦します」。中学3年だった昨年3月に4回転トーループを跳んで周囲を驚かせたが「実は、その前に初めて成功した4回転がサルコーなんです」。確度が高まらず試合には組み込まなかったが、解禁する。「練習では跳んでいたので確率は上がっている。さらに高めたい」と新たな得点源を磨く。

こどもの日の5日、17歳になり“大人”の仲間入りする。「17でシニアは想像より早かったけど、この1年の経験や成長を考えれば納得」。その第1歩となるグランプリシリーズ(10月開幕)の開催可否は8月1日以降に順次判断される。「自分が決められるわけではないし、今は家にいることが大事」。わきまえながら、新型コロナの終息を願いながら「目標の北京五輪」へ歩み出す。【木下淳】

○…鍵山が“おうち時間”で意外な才能を発見した。4月17日、インスタグラムに自筆のイラストを「お絵描き」として投稿。スヌーピーや人気漫画「東京喰種」「HUNTER×HUNTER」「7つの大罪」の見事な模写を披露した。「趣味で、新型コロナで滑れなくなってから描き始めた」と短期間で向上。美術の成績は「良いとは…言い切れない」と笑いながら「だんだん上手になるので気分転換になる」と解説した。

◆フィギュアスケートの年齢制限 国際スケート連盟(ISU)が年齢別にシニア、ジュニア、ノービスの3クラスに分けている。シングルのノービスは10~14歳、ジュニアは13~19歳(ともに新シーズン開幕前の7月1日時点)。シニアは15歳以上(前年の7月1日時点)で、ISU主催大会と五輪に適用される。本年度の特別強化選手で比較すると、宇野は18歳に、羽生は16歳に、鍵山は17歳になる年にシニア転向した。

◆鍵山優真(かぎやま・ゆうま)2003年(平15)5月5日、長野・軽井沢町生まれ。5歳でスケートを始め、中学から横浜市で練習。18年アジア杯で国際大会初出場初優勝。19年に星槎国際高横浜に進学し、同年の全日本ジュニアを制した。グランプリファイナルは4位。4回転トーループは羽生から「高さ、軸の強さを見習いたい」と評された水準。父正和さんは92年アルベールビル、94年リレハンメル五輪に出場、91~93年に全日本選手権を3連覇した名スケーター。158センチ、51キロ。血液型O。