フィギュアスケート男子で冬季五輪2連覇の羽生結弦(25=ANA)が6日、日本スケート連盟の公式ツイッターを通じて3本の動画を公開した。

自身も被災した11年3月11日の東日本大震災から滑ってきたプログラムのうち17曲を、屋内で舞う姿を5分11秒かけて披露。新型コロナウイルスの感染拡大下、95年の阪神・淡路大震災や18年の北海道地震で被災地に届けたエキシビション曲も織り交ぜることで、終息への祈りと願いを込めた。

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午後3時、羽生から19日ぶりの動画メッセージが届いた。「フィギュアスケーターの羽生結弦です。2011年3月11日から今までの、僕とプログラムたちの道のりです」。そう切り出すと、白壁と照明だけのシックな屋内で、練習ウエア姿の羽生が演舞を始めた。

「伝説のニース」こと12年世界選手権の「ロミオ+ジュリエット」などの振り付けを披露。髪形もセットし、19歳で日本男子初の金メダルに輝いたソチ五輪の2曲や、66年ぶり冬季大会2連覇を遂げ、今年復活させた「バラード第1番」「SEIMEI」で締めた。

祈りが曲に込められていた。冒頭の11年「White Legend」は、東日本大震災で4日間の避難所生活も経験した羽生少年が、立ち直り、アイスショーに初出演した日の演目。「The Final Time Traveler」は大阪で、阪神・淡路大震災から20年を前に選んだ。「天と地のレクイエム」は原題が「3・11」。「Notte Stellata」は、その日に見た星空を投影した。「春よ、来い」は北海道地震の被災地へ届けたものだった。

肉声は最初だけで、あとはメドレー動画。表現者らしく、大災害を乗り越えてきた日本人と自らの演技を重ね、新型コロナ終息への願いを込めた。【木下淳】