全国制覇58度を誇る能代工(秋田)バスケットボール部のヘッドコーチ(HC)人事を巡りドタバタ劇が起きている。

本年度着任した荒川正明校長(55)の意向で、同校OBの佐々木信吾教諭(47)が11日付で新HCになり、外部から招いたカリスマ指揮官の小野秀二氏(62)が退任。荒川校長が同校で16日、部員や保護者に初めて経緯を説明したが、出席者の総意は小野氏のHC復帰だ。学校側は「来週中には結論を出したい」と再考も含め検討する。

荒川校長はHC交代の一番の理由に、新型コロナウイルス感染拡大を挙げた。教員生活の中で「監督は教諭、コーチは外部の認識でやってきた」と持論を展開。常勤の佐々木教諭なら「何かあったときにコートの中も外も一元的に管理できる」。部活以外の情報も把握し、平成(秋田)ではHCとして16年冬の全国高校選抜(現高校選手権)を経験。昨年度まではウエートリフティング部顧問だったが適任と判断した。

部員51人中47人が寮生、下宿生で「生徒の命を守る、安心安全の確率を0・1%でも高めるのが私の責任」と何度も繰り返し、報道陣への対応を含めると約4時間半の長丁場になった。

小野氏は前校長から本年度の体制を「佐々木さんと話し合って」と言われ、HC継続で話は進んでいた。しかし、着任早々の荒川校長が撤回し、4月6日にテクニカルアドバイザー転身を打診。小野氏は「HCとして日本一になるのが自分のミッション。おことわりします」。再び話し合いが行われることなく、同6日~同20日まで練習を指導。自粛期間になり、部活再開の今月11日に指揮官変更が告げられ、佐々木教諭が練習を見るようになった。

固い絆がある。部員の1人は「秀二さん(小野氏)がHCで能代工に来たという人はいっぱいいる。11日に急に(退任を)聞かされて正直、自分は立ち直れない。教えてもらいたいことがまだまだある」と涙ながらに訴えた。刷新か、継続か。古豪復活への大きな分岐点になる。【山田愛斗】