ラグビー日本代表最多の98キャップを誇り、18日に現役引退を表明した元日本代表ロックの大野均(42=東芝)は、盟友のトンプソン・ルーク氏(39=現近鉄アドバイザー)へ感謝の気持ちを示している。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で自粛生活が続く中、大野は同じロックでともにW杯3大会連続出場したトンプソン氏の著書「トンプソン ルーク」を熟読している。「ロックのパートナーとして長時間一緒にいて心強かった。彼がいたから今の自分があると思っている。心から感謝している」。5カ月前に現役引退した盟友へ、こう感謝した。学生時代に居酒屋バイトで学んだ豚カツやアジフライなどの揚げ物を調理しながら本を読んでいるという。

19年W杯最終メンバー発表日の8月29日。大阪にいた大野は「トンプソン選手が代表入りしたよ」とファンから聞き、JR梅田駅に直接呼び出して激励した。自身が、代表選出されたことかのように胸が高ぶったという。

福島県郡山市出身。市内にある日大工学部に進学し、ラグビー部の先輩の熱烈勧誘を受けて、たまたま競技を始めた。東北地区大学リーグ2部だったが、192センチの恵まれた体格と愚直なタックルなどの泥臭いプレーで、強豪東芝のトライアウトに合格。“モテ男”で上京時には、母から「酒と女性には気を付けろ」と言われるほど警戒された。当時は短髪で、長期合宿前には丸坊主にしていたが、「楽」を理由に07年W杯前から髪を伸ばし始めた。その後、長髪と顎ひげがトレードマークとなり、ラグビー界の「阿部寛」と言われるまでになった。

日本代表最多の98キャップは、雑草魂を持って自ら切り開いたラグビー人生の証だ。42歳の鉄人は、3歳下の盟友に謝意を表し、後を追うかのように19年間の競技人生にピリオドを打った。【峯岸佑樹】