新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が14日、39県で解除となり、残る8都道府県も解除される可能性が出てきた一方で、スポーツ界に「日常」が戻るめどは立っていない。競技団体は今、活動再開をどのように待ち続けているのか。19日までに日刊スポーツの電話取材に応じた日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長(61)に、現状と今後について聞いた。

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日本スポーツ振興センター(JSC)は15日、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC=東京・北区)の屋外施設の利用を再開し、トップ選手の体力づくりを支援する施策を公表した。しかし、屋内競技の卓球としては残念ながら触手は伸びない。

日本卓球協会の宮崎強化本部長は「2カ月近い自粛期間の中、トップアスリートは家で、皆さんが想像している以上のトレーニングを積んでいる。屋内競技にとって(専門外の)屋外で体力づくりと言われても、あまり意味を成さない」と率直に言った。

東京五輪代表らは地元などに帰り各拠点で、できる範囲の強化に取り組んでいる。男子の倉嶋洋介監督、女子の馬場美香監督が小まめに選手と連絡を取り合い、その報告が週に1度、宮崎氏のもとに届く。活動再開の準備はしっかりと整え「1日でも早いNTCの利用再開を願っている」。同時に、同協会は再開に向けて「新型コロナ対策マニュアル」を作成している。

NTC卓球場の利用人数が密にならないよう適切に管理し、1時間に1度、換気。協会職員が選手エリアに入らないようにしたり、事務所スペースではテーブル間にアクリル板を設置する。監督、コーチもマスク着用とする。「大会が開催できる日に向けて内容を更新し、大会時のマニュアルも作っていく」という。

卓球だけにとどまらず、NTCに住み込みで強化に励むエリートアカデミー(各競技のトップ選手育成のため限られた中学、高校生が参加)の問題にも言及した。アカデミー生が多く通学する北区稲付中では分散登校を実施中。しかし、閉鎖中のNTCに居住できない地方出身者は、分散登校に出席することもできない。

今月1日、日本オリンピック委員会(JOC)山下泰裕会長と、JSC大東和美理事長あてに、アカデミー生の居住権と学習権の回復を求める要望書を送付。しかし半月が経過しても音沙汰がない。スポーツの現場はNTCの一律閉鎖ではなく、新型コロナ対策を徹底した上で臨機応変な対応を求めている。【三須一紀】

◆宮崎義仁(みやざき・よしひと)1959年(昭34)4月8日、長崎県生まれ。近大卒。85年世界選手権ではシングルスで5位に入り、卓球が初採用された88年ソウル五輪にも出場。01年に男子日本代表監督に就任し、12年ロンドン五輪まで同職を務める。16年に日本卓球協会強化本部長に就任した。