八戸工大一(青森)レスリング部は3年生各自の夢へ向けて再発進している。昨夏の全国総体女子68キロ級3位などの実績がある斉藤美姫(みさき、3年)は警察官を目指して公務員試験の勉強を開始した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月の全国選抜(新潟)と全国総体(群馬)中止の悔しさを次の舞台への糧とする。

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斉藤は「残念…。でも今は部活よりも試験勉強に気持ちを切り替えています」と声を絞り出した。レスリング場上部に飾られている卒業生の小原日登美が12年ロンドン五輪金メダル時に着用したユニホームを見つめながら、あふれそうな涙もこらえた。

三本木小1年から競技を始めて計12年。十和田クラブ、五戸道場で楽しさも厳しさも知り、昨年10月の全日本女子オープン選手権(静岡)では2位まで上り詰めた。以降は、同8月の全国総体準決勝で敗れた小学校時代からの宿敵でもある中京学院大中京(岐阜)寺本鈴(3年)に全国総体でリベンジすることを目標に、厳しい練習を乗り越えてきた中での中止だった。

十和田東中時代に青森・五戸出身で16年リオ五輪グレコローマンスタイル男子59キロ級銀メダル太田忍(26)に直接指導を受けて意識が変わった。「目標をしっかり決めて努力する大切さを学びました」。得意なことは「綱引きと洗濯」。強靱(きょうじん)な力と、親元を離れた下宿生活で壊れかけの洗濯機でも創意工夫する力も得た。早寝早起きをモットーに、朝7時半からの朝練習から積んできた高校レスリング生活は終わったが「次は公務員試験に合格して警察官になることが目標です」。白バイに乗ることが一番楽しかった幼少期からの夢をかなえる努力に切り替えた。

国体は62キロ、53キロの2階級しかなく受験とも時期が重なるため、全国総体を最後にすると決めていた。今後は週末は十和田市の実家に戻り、学校のある平日は体力テストにも備えて数日は部活動と両立するつもりだ。「体力面には自信がついたので、必ず白バイに乗れるようになりたいです」。目標を奪われた悔しさも味わい、目標達成の意識も強さを増した。【鎌田直秀】