高校生アスリートが輝く舞台を新型コロナウイルスが奪った。8月に開催予定だった全国高校総体(インターハイ)は4月に史上初の中止が決定。テニス競技は8月11~17日まで、滋賀県長浜市で男女団体戦などを行う予定だった。文武両道を貫く磐城(福島)テニス部は男女ともにインターハイ出場を目指していた。同校教諭でテニス部の斎藤崇宏監督(39)は選手の心境を代弁した。

磐城は県内屈指の進学校で、野球部は今春のセンバツに21世紀枠で出場予定だったが甲子園が中止に。テニス部も女子団体戦で全国選抜(3月20~26日、福岡=博多)に出場予定だったが、コロナ禍で春の全国高校スポーツは軒並み中止に追い込まれた。

斎藤監督は「命よりも大事なものはないと思うので、今回は仕方ない」と受け止めつつ、「やっぱり悔しいです」と落胆を口にした。特に3年生は春の無念を晴らすため、最後の夏にインターハイ出場を誓っていただけに、余計に悔しさだけが募る決定になった。

学校は4月21日から休校となり、5月25日からの分散登校を経て、6月から一斉登校が始まった。斎藤監督が「高校総体中止」を選手1人1人に伝えたとき、電話口からは「切り替えられません。この大会に懸けていました」と悲痛な言葉を受け取った。文武両道で頑張る姿を近くで見てきただけに、「軽い気持ちで部活動をやっていなかったんだから、今は切り替えられなくてもいい。引きずってもいい。でも落ち着いたら、立ち直ろう」と慰めの言葉を送った。8日から部活動も再開。3年生は再スタートを切った。

福島県高体連は4月24日、インターハイの開催可否決定を待たず、県高校総体の中止を決めた。それでも関係者は、各地区での代替大会を8月開催に向けて、協議を進めている。斎藤監督は「何らかの試合はさせてあげたかった。もし大会ができなければ、時期を判断しながら、校内戦で先輩と後輩で試合することも考えていました。このまま何もなく3年生を送り出すことは考えられなかったです」と思いやった。高校3年間の集大成として、「戦わずして引退」はさせないつもりだ。【佐藤究】