今春創部した新潟食料農業大ラグビー部が6月に入って本格的に全体練習を始めている。全国高校ラグビー大会で東福岡を3連覇に導いた実績を持つ名将・谷崎重幸監督(62)の下、1年生19人でスタート。新型コロナウイルスの影響で始動が遅れたものの、歴史の礎を築くフィフティーンは、参戦する関東大学リーグ戦5部での今秋デビューに向けて一歩を踏み出した。

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グラウンドに出る回数を重ねるごとに、新潟食料農業大の基盤が少しずつできていく。練習のほとんどはパス回し中心のランニングメニュー。谷崎監督は「ほかのチームとは高校1年生が大学1年生にぶつかっていく学年差。パワーでは通じない。走らないとね」と、走り勝つイメージを描いている。

全体練習が始まったのは1日から。タックルなどの接触プレーはまだできない。また、選手19人のうち大阪や千葉など在住の4人はまだ合流できていないなど、新型コロナウイルスの影響を受けながらの活動開始となった。それでも「集まって練習できることがうれしい」。桐生第一(群馬)で昨年の全国高校大会に出場した石川智也は言う。

今秋開幕予定の関東大学リーグ戦に参戦し、5部からデビューする。順調に昇格を重ねても1期生は1部には上がれないが「最後に2部で戦うことが目標」(石川)と1期生のターゲットは明確だ。「みんなラグビーが大好きなんだということが練習から伝わってくる」。谷崎監督は選手の姿勢に手応えを感じている。

重視するのは“自主性”と“チャレンジ”。練習中、谷崎監督から怒号が飛ぶことはない。工夫して挑んだプレーには、ミスをしても賛辞を送る。選手は笑顔で声をかけあいながらもプレーの確認を繰り返す。「監督の指導方法は動画などで見ていた。入学前から絶対に楽しいと思っていた」(石川)。ルールを持たず、責任感を持つ。東福岡を合計4度の優勝に導くなど、高校ラグビー界の絶対王者に君臨させた谷崎イズムは、すでに浸透しつつある。

コロナ禍で4月の入学式は行われなかった。大学の授業もオンラインで始まった。部活動も中止。筋トレやランニングなど、地道な自主トレの毎日。その間、谷崎監督は選手が住むアパートを訪れ、ゴミの分別などの日常生活から目を配った。選手とはLINEなどを使ってコミュニケーションを図った。ラグビーができない期間、積極的に絆を深めていた。「何もかもゼロからの積み重ね。楽しみです」と谷崎監督。部の土台を作るための歩みが始まった。【斎藤慎一郎】

◆新潟食料農業大学 2018年開学。農場から食卓までをカバーする「食」の総合大学を目指す。食料産業学部食料産業学科に現在、3学年392人が在籍。2年から選択コースにアグリコース、フードコース、ビジネスコースの3コースがある。指定強化部は、自転車競技部が開学と同時に創部。20年4月にラグビー部と柔道部が創部。胎内キャンパス(胎内市平根台2416)と新潟キャンパス(新潟市北区島見町490)を持つ。