テニスの4大大会、全米オープン(ニューヨーク)を主催する米国テニス協会が17日、オンライン会見で無観客開催を発表した。その中、日本時間ですでに18日となった深夜に、日本テニス協会は、看板大会の男子ツアー、楽天ジャパンオープン(東京・有明)と、女子ツアーの花キューピッド・ジャパン女子オープン(広島)両大会の中止を発表した。

あまりにも対照的な大会への対応に、新型コロナウイルス対策の難しさが見て取れる。新型コロナの感染者を収容する施設として、一時的に貸し出していたナショナルテニスセンターのセンターコートに米協会の幹部は座り、誇らしげに開催をぶち上げた。

米協会のドース最高経営責任者(CEO)は「歴史的な日だ。とにかく新たな改革が必要だった」と、<1>選手の健康と安全を守る<2>テニスを守る<3>米国協会と選手の財政を守る、という3本柱で、開催を決めたと話した。

開催の概要は次の通りだ。8月31日に開幕。無観客。シングルス予選は行わず、本戦は男女128人が出場。その内、8人が推薦選手枠(ワイルドカード)だ。男女ダブルスは64組から32組に削減。混合ダブルス、ジュニア、車いすテニスは行わない。

選手の滞在場所はJFK空港近くのホテルを借り切り、大会が仲介するプライベートハウジングも認め、外出や行動制限で缶詰にする。選手1人に対して、スタッフは最大3人まで。選手や同行者は、ニューヨーク入りした後、ホテルでPCR検査を受ける。

会見には、全米大学体育協会(NCAA)の医局長で、米国協会の医局アドバイザリーの専門家ハインライン博士も同席した。同博士は「テニスは社会的、身体的な距離を保てる理想的なスポーツ」と賛美し、「安全にプレーできる」と、開催に太鼓判を押した。

しかし、「もし選手や関係者から陽性者が出たら」との問いには、「症状を見ながら適切な処置をして隔離する」と話すにとどめ、「大会の途中での中止はないのか」との問いには「それは会場がある場所の保健局が決めること。大会の判断ではない」とした。

開催を裏付ける医学的な根拠はなく、提示されたのは、米国内の各州の感染者数だけ。アラスター大会ディレクターは「ニューヨーク州は、国内でも5番目に低い数で抑えている。これが開催に向けての自信になった」と胸を張った。

米国協会は、開催の目的が経済が最優先だったわけではないという。昨年、全米の大会収入は約3億7000万ドル(約400億円)。アラスター氏によると、無観客で「今年は80%の収入ダウン」が見込まれるという。米協会は、すでに100人以上の職員を解雇していると伝えられる。

ただ、賞金総額は6000万ドル(約66億円)で、昨年から約8~9%しか削減されていない。収入が8割減っても、賞金を無理やり確保することで、何とか選手の出場を促すということだろうか。会見前に、男子世界1位のジョコビッチ(セルビア)、2位のナダル(スペイン)、女子1位のバーティ(オーストラリア)、2位のハレプ(ルーマニア)らは欠場をほのめかしていた。

全米開催の会見と同時に、5月に予定されていた全仏(パリ)は、9月27日からの開催を発表。シングルスの予選も行い、人数制限はあるとしても観客も入れるという方針だ。そして、その中、日本協会は苦渋の決断を発表した。【吉松忠弘】(続く)