甲子園を沸かせた伝説のスラッガーが、バスケットボールで地元を熱くする。BリーグB2群馬クレインサンダーズは1日、都内で会見を開き、阿久澤毅新社長(59)が就任会見を行った。

阿久澤氏は群馬・桐生高野球部時代、4番打者として78年センバツ甲子園で2試合連続本塁打を放ち、ベスト4に進出。東京・早実の王貞治(現ソフトバンク会長)以来20年ぶりだったことから阿久澤氏は「王2世」と呼ばれ、その年のドラフト候補に挙がった左の強打者だった。

昨年末、群馬・勢多農林高の野球部監督を務めていた時にオファーが届いた。突然の依頼に「何で自分が?」と驚いたが「地元で県民の心を支え、バスケットを盛り上げて、根付かせたい」と快諾した。もちろん、新たな世界で、しかも社長として経営を任される立場となり、不安もある。

「地元群馬で多くの人がバスケットを見に来て幸せを感じてもらえれば。大変だが、少しずつファンを増やすことが生き残っていく道」と覚悟を決めた。

阿久澤氏を推薦した吉田真太郎取締役(37)は「経営するということはトップが大切。群馬において知名度があり、一緒に日本一を目指す熱い思いがある」と抜てきした理由を明かした。

定年1年前の59歳で決断。教え子たちへの思いもある。「現場に残していく生徒もいる中、残り1年にこだわるという選択肢もあった。無念でもあるが、自分が動くことで生徒たちが、勇気をもらう部分があるのではないかと」と語った。

話があるまでは野球漬けの生活。バスケットを見たことがなかったという。昨年末家族を連れ初観戦。「80歳過ぎた母もおもしろいと言ってくれた。その人たちを取り込めたらいいものができる」と引き込まれた。今年4月から県内のあいさつ回りを始め、かつての教え子たちを含め、地元の人たちから激励を受けたという。

チームは18-19シーズンにファイナルに進出したが、あと1歩のところでB1昇格を逃した。昨シーズンは新型コロナの影響で中止になったが、後半9連勝するなど、成長一途をたどる。この日は新加入4選手も登壇。すべてB1からという大胆な補強で1年での昇格を狙う。

資金面での懸念もあるが吉田氏は「ピンチはチャンス。こういうときだからこそ思い切った制作に出た」と言い切った。

指導者からビジネスの世界に飛び込む阿久澤氏は「バスケットというより、1つのスポーツと考える。不安はあるが、いろんなスタッフもいて相談してくれるので大丈夫。フロントも新体制となり、勢いが増している。日本一のクラブへ一丸となって戦う」と意気込んだ。

高校球児と夢を追い掛けてきた男が、今度はバスケット選手とともにチームをB1昇格、日本一へと挑戦する。【松熊洋介】