躰道(たいどう)の個人法形(ほうけい)で、小学3年の小学生低学年の部から各カテゴリーを制し、全国大会6連覇中の青柳是呂(新潟・曽野木中3年=練武館)が、来年の全国高校生躰道優勝大会と全日本躰道選手権大会のダブル優勝へ向け、練習を開始した。V7を目指した全国少年少女躰道優勝大会(8月)は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となったが、この悔しさをバネに、来年の日本王者を目指す。

道場の鏡に映る自分と正対し、青柳が息を整える。緊張感に包まれる中、技を繰り出す際の衣ずれの音が道場に響き渡った。気迫のこもった表情で自分の世界に入り、特長であるスピード豊かな技や後方宙返りを繰り返した。

中学年代の総仕上げになるはずだった8月の第42回全国少年少女躰道優勝大会はコロナ禍で中止となったが、来年の「全国高校生躰道優勝大会」と、高校1年から参加資格を得られる「全日本躰道選手権大会」のダブル優勝へ目標を切り替えた。「すべての技のキレ、基礎をしっかり練習し、直す。回転技の難易度も上げるため、バク宙(後方転回)の練習にも取り組む」。

青柳が取り組む「法形」とは空手の形と同様に、仮想の敵との攻防を演武し、技の正確性や難易度、表現力が評価される。全身ぶれないバランス力と、高い集中力が求められる。3歳で競技を始め、小学3年の小学生低学年の部、同高学年の部、中学生の部と各年代別で優勝。昨年は各地区代表24人を抑えて全国大会6連覇を達成した。得意技の後方宙返りは両親の協力もあり、小学3年で身につけ、磨きをかけた。青柳は「空気感、勢い、アクロバティックな技がかっこいい」と躰道の魅力を話す。

“打倒青柳”が全国の同世代選手の合言葉。14歳ながら常に勝ち続けなければならない重圧とも闘う姿に、父博さんは「相当なプレッシャーがある中よくやっている。息子ながら尊敬する」と目を細める。コロナ禍で2月から約4カ月間、道場には通えなかったが筋トレや体幹強化を続けた。曽野木中ではバスケットボール部に所属。「ジャンプや瞬発的に左右に動くことなどでレベルアップできる」と他競技を参考にするなど研究にも貪欲だ。

練武館の泉智慶代表は「今後の連覇継続は簡単なことではないが、そこに挑戦できるのは(青柳)是呂君だけ。強化できる環境を整えたい」と全力バックアップを約束する。「まずは来年、高校でてっぺんを狙う。いつかは世界で戦いたい」と青柳。大きな目標達成へ、進化を続ける。【小林忠】

◆青柳是呂(あおやぎ・ぜろ)2005年(平17)7月21日生まれ、新潟市在住。母親の友人の紹介で3歳で躰道を始め、小学3年から全国少年少女躰道優勝大会6連覇中。姉鞠花(まりか)も中学の部で全国制覇。後方宙返りなど高難度の技は父と独学で習得。170センチ、50キロ。

◆躰道(たいどう) 施体、運体、変体、捻体、転体の5つの動作から構成される。空手に、体操競技の要素を盛り込み、バック転やバック宙をしながら蹴りを入れるなど3次元の動きを見せる武道。競技人口は子供から大人まで全国会員は約3000人で、新潟県の会員は約100人。全日本選手権は高校1年から成人の部への参加資格が得られる。世界大会は4年に1度行われ、前回大会は17年山梨で開催された。