男子個人90キロ級は、カナダ人を父に持つ桜井湖太郎コリー(北越3年)が優勝した。斎藤友輝(新津工3年)との決勝は一本背負いで一本勝ち。新型コロナウイルス感染を防ぐための休校期間中も、柔道部員でただ1人寮に残ってトレーニングを続けた。その努力の成果を、高校最後の畳の上で見事に披露した。

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178センチの桜井が、低い姿勢で斎藤の懐に潜り込んだ。相手を腰に乗せ、回転しながら畳にたたきつける。開始から1分21秒。切れ味鋭い一本背負いが決まった。「高校1年の時に、顧問の今道(敬)先生から教えてもらった技。最後に1本取れたので、練習のかいがあった」。高校生活最後の大会で3年間の集大成ともいうべき技をさく裂させた。

コロナ禍の中でも、ひとりで黙々と練習してきた。桜井は南魚沼市出身。寮生の柔道部員は休校期間中、実家に帰ったが、ただひとり寮に残り、ウエートトレーニングに取り組んだ。壁打ち込みも熱心に繰り返した。「高校のゴールはインターハイ(全国高校総体)出場」という目標は消えていたが気持ちを切り替えていた。「(全国)大会はなくなったとしても、今の努力は必ず役立つ」。優勝で、その努力を結実させた。

祖父は参議院議員を1期、衆議院議員を6期務めた故桜井新氏(享年84)。桜井は、六日町中3年のときに祖父の前で柔道続行を誓っていた。「祖父が亡くなる際に『柔道をする』と約束した。祖父のために、と3年間やってきた」。柔道と並行して中学時代に取り組んできたレスリングに気持ちが動いた時期もあったが、高校では柔道一筋。今道監督は教え子の柔道への姿勢について「強くなりたい、という気持ちが強すぎるくらいだった」と話す。

高校3年間で、桜井は全国大会とは無縁に終わった。しかし、柔道への情熱は失っていない。進学を希望しており、大学に進んでも柔道を続ける意向だ。「いずれは、自分の道場がほしい。将来的には柔道を教える立場になりたい」。優勝は、夢への第1歩になった。【涌井幹雄】

◆桜井湖太郎コリー(さくらい・こたろうこりー)2002年(平14)7月25日生まれ、南魚沼市出身。六日町中。柔道は、北辰小1年から六日町柔道クラブで開始。中学3年で県大会個人81キロ級3位。1月の全国高校選手権予選は、個人無差別級3位。178センチ、88キロ。血液型AB。