フィギュアスケート男子で冬季オリンピック(五輪)2連覇の羽生結弦(25=ANA)が、今季グランプリ(GP)シリーズを欠場することが28日、日本スケート連盟から発表された。新型コロナウイルス対策の変則開催で、第2戦スケートカナダ(10月30日~11月1日)か第6戦NHK杯(11月27~29日)に出場の選択肢があった中で感染リスク回避を最優先。持病の気管支ぜんそく、後遺症への懸念も示しながら22年北京五輪プレシーズンのGPシリーズに出場しないという一大決心をした。

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羽生が世界で最初に決断した男になった。出ない。シニアに転向した10-11年シーズン以来、10季連続で戦ってきたGPシリーズを欠場するのは初めて。新型コロナと持病の気管支ぜんそくとの関係性について自ら切り出すと「確証はない」とも前置きした上で「呼吸器系基礎疾患を有する者が新型コロナに罹患(りかん)した場合、重症化しやすいとの情報もあるので可能な限り慎重に行動したい。また、一部選手が後遺症によって活動が困難になってしまっている点からも慎重に行動を検討する必要性がある」と連盟を通じ切実なコメントを出した。

今季のGPシリーズが「1人1大会」「出場者は開催国の選手、その国(近隣国)で練習する選手」に制限される中、トロントが拠点の羽生はスケートカナダ(オタワ)とNHK杯(大阪)のどちらを選ぶか注目されていた。関係者によると、現在は国内で練習中。NHK杯を選べばオーサー・コーチの来日が困難で、カナダに渡れば「入国後2週間の自己隔離が必要となり、その期間、練習など一切の活動ができないため万全の状態で試合に臨むことができません」と訴えた。

逆境下の自衛策を示した最後はポリシーを貫いた。「このコロナ禍の中、私が動くことによって、多くの人が移動し集まる可能性があり、その結果として感染リスクが高まる可能性もあります。世界での感染者数の増加ペースが衰えておらず、その感染拡大のきっかけになってはいけないと考え、私が自粛し、感染拡大の予防に努めるとなれば、感染拡大防止の活動の1つになり得る」。そう考えて決めた。行動しない、と。

覚悟を重ねた結果が「大変残念ではありますが、欠場することを決心いたしました」。来年3月の世界選手権(スウェーデン・ストックホルム)出場枠を争う12月の全日本選手権(長野)には出場の可能性を残すが、北京五輪プレシーズンの試合勘より、今は身の安全と感染防止を優勢順位の頂点に置いた。【木下淳】