フィギュアスケート男子の20年ユース五輪(オリンピック)金メダリストで、今季からシニアに転向する鍵山優真(17=星槎国際高横浜2年)が、世界的な振付師ローリー・ニコルさんが手掛けた新プログラムに挑戦している。出演する12日からのアイスショー「ドリーム・オン・アイス」(KOSE新横浜スケートセンター)で初披露。夢の五輪への第1歩を踏み出す。

振り付けを依頼したのは今季ショートプログラム(SP)曲。米チェリスト、ヨーヨー・マの「Vocussion」を演じる。新型コロナウイルス流行による渡航制限でニコルさんの拠点カナダに渡れないため8月15日からリモートで指導を受けている。時差に合わせた午前2時30分からの3時間レッスンなど、ここまで通算15時間を超えた。

7月の全日本シニア合宿では、暫定的にSPはジャズ曲「Take Five」を、フリーはアニメ映画「もののけ姫」を練習。ともに佐藤操コーチが担当していたが、鍵山が「操先生から『海外の振付師にお願いしてみない?』と提案されて」と明かすように、恩師に背中を押され、元世界女王の浅田真央らを担当したニコルさんへの振り付け志願を決意した。シーズン本格開幕前では異例のプログラム変更に踏み切った。

この件に関し、取材に応じた佐藤コーチは「ありとあらゆる優真の動画を送ってローリーさんに見ていただき、表情など良いところも改善すべき部分も指摘してもらっています」と近況を説明した。テーマはシルクロードで「優真が旅をします。素晴らしい出会い、楽しい経験、時には盗賊と闘う場面もある。決して穏やかな道のりではないところが、まさに彼が今季からシニアに上がって初体験する世界とリンクする。さまざまな国のメロディーが流れ、そのたびにローリーさんが『ここはインドよ』などと情景を想像させながら動きを実演してくれるんです。まだOKをもらえていないくらい、厳しく、丁寧に教えてくださっている姿を見て、優真に提案して間違いなかったと確信しました」と充実の日々を送る。

フリー曲は「Lord of the Rings」で、こちらは佐藤コーチが振り付けする。“指輪物語”の映画版ではなく、女性ボーカルが入ったミュージカル版を使用。多数のサンプル曲の中から、鍵山が「胸がジーンとした」と感動し、即決したという。フリーもニコルさんに要請する構想はあるものの、新型コロナの状況が流動的なため当面はSPに集中する。コーチは父親で五輪2大会連続出場の鍵山正和氏と佐藤さん、振り付けはニコルさんと佐藤さんという体制でシニア初年度を迎える。

4回転ジャンプはSPもフリーもトーループとサルコーの2種を組み込む。リモート指導を開始できたのは「ドリーム・オン・アイス」まで既に1カ月を切っていた段階。現在は急ピッチで習得に励んでいる。アイスショー出演後は、今季最初の公式戦として関東選手権(10月1~4日、茨城・ひたちなか)への出場を予定している。【木下淳】