世界9位の大坂なおみ(22=日清食品)が、4大大会3度目の女王に王手をかけた。同41位のジェニファー・ブレイディ(米国)を相手に、激しいバトルを制し、7-6、3-6、6-3の2時間8分、フルセットで勝ち、全米では18年優勝以来2年ぶりの決勝進出を果たした。決勝では、元世界女王で同27位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)と、12日(日本時間13日午前5時以降)に対戦する。対戦成績は大坂の2勝1敗。

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球を打つ激しい音が、無観客の巨大センターコートに響き渡った。パワーとパワーがぶつかり合うガチンコ対決。女子テニスでは珍しい、緊迫したサービスキープ合戦を、大坂が制した。「レベルの高い試合で、本当に楽しかった。とてもハッピー」と、観戦した恋人で人気ラッパーのコーデーに決勝進出をプレゼントした。

決勝進出がかかった最終セット第9ゲーム。さすがに胸も高鳴った。6試合目の最後にきて、初めて緊張感をあらわにした。「一生に1度のチャンスのように感じて、ナーバスになった」。サーブのトスがまともに上がらない。この日、初めてのダブルフォールトが出た。

それでも「1ポイントずつと言い聞かせた」。冷静で、心を乱すことがないのが、今大会の大坂だ。最初のマッチポイントで、時速186キロのサーブが入ると、相手がフォアのリターンをネット。そのまま体を2つ折りにして全身で喜びを表すと、緊張から解き放たれて苦笑いした。

19年の全豪決勝を思い出したという。その時も第1セットはタイブレークで奪いながら、第2セットをリードしながら落とし、最終セットで突き放した。「その時の経験が生きた。精神的にも成長できたと思う」と話した。4大大会の大舞台での経験が、相手との差となって表れた。

その差はわずかだった。決定打はともに35本。サービスエースは、ブレイディが10本に大坂が9本と、決め球は互角だった。しかし、勝敗を分けたのは、大坂が新たに身につけた凡ミスの少なさだ。相手の25本に対して17本。その差8本が、合計獲得点で10点差につながった。

決勝進出を胸に秘め、7枚用意してきた人種差別への抗議マスクも、12日の決勝ですべて披露できることになった。今大会、すべての試合をセンターコートで戦うことも確定。優勝へいよいよあと1勝に迫った。