東京オリンピック(五輪)の屋内種目、対人競技では初の全日本選手権が、フェンシングから始まった。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今年は出場者を各種目16人に制限。無観客、と同時に全試合がライブ配信される形で開催された。

今大会は、すべての選手が受付時にスマートアンプ法による検査を受ける。陰性と確認されたフェンサーだけが試合会場に入れる安全対策が徹底され、ピスト(競技コート)も従来の半分以下の4つに減らして密を避けた。試合の合間もスタッフがピストを毎回消毒した。

その中で午前の女子エペから試合がスタートした。12年ロンドン、16年リオデジャネイロの両オリンピック(五輪)代表で、2児の母としても奮闘する佐藤希望(34=大垣共立銀行)が初戦で吉松琳果(日大)に15-7で勝利。続く準々決勝も鈴木穂波(鹿児島県体協)を12-7で下し、準決勝でも大石栞菜(山九)を12-9で退けた。

国内ランキング1位の実力を見せつけると「試合前の検査の方が緊張した。(仮に陽性反応が出て)帰ることになったらどうしようと思って」と笑顔。「試合の方は自分のペースでできました」。日本協会の太田雄貴会長(34)からも「さすがの一言。(コロナ後も)しっかり大会に照準を合わせて、非常に落ち着いていた」と称賛された。

26日の決勝では5年ぶり6度目の優勝を目指して寺山珠樹(18=日大)と対戦する。「まだまだ若いもんには負けていられない。次の土曜日にしっかり合わせたい。34歳、そういうのは得意なので」と自信を見せた。

一方、昨年度女王で2連覇を狙った原田紗希(慶大)は初戦で古田彩稀(大阪シティ信用金庫)に8-15で敗れた。試合前、太田会長に優勝杯の返還を行ったばかり。ところが、これを「波乱」と表現できないのは出場者を、昨年の74人から新型コロナ対策で16人に絞ったからだ。昨年優勝の原田に対して古田は3位。前回大会4強の2人が初戦でいきなり対戦することになり、特別な大会を象徴する幕開けとなった。

予選は1日2種目で準決勝まで。午後は男子サーブルが行われた。18日は男子フルーレと女子サーブル、19日は女子フルーレと男子エペを実施。1週間後に行われる男女6種目の決勝戦はABEMAで生中継される。【木下淳】